現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
隕石を1辺1cm程度に切断し、衝突前の隕石を、東北大学にあるX線CTを用いて隕石内部を詳細に撮像した(解像度10μm/boxel)。次に、JAXA宇宙科学研究所において、隕石に対して衝突実験を行った。衝突後の最大破片を再度、東北大学にあるX線CTを用いて隕石内部を撮像した。 2020年度は、CV隕石であるアエンデ隕石に対して、2021年度は、CM隕石であるマーチソン石、アグアス・ザルカス隕石に対して実験を行った。成功ショットの内、解析した標的は、アエンデ隕石で7個、マーチソン隕石で2個、アグアス・ザルカス隕石で2個である。それらの標的の撮像データから、コンドリュールの3次元形状モデルを作成し(CV隕石で66個、CM隕石で42個)、コンドリュール中のクラック進展を詳細に調べた。その結果、CV隕石では、半分以上のクラックは、コンドリュールの境界を沿うように成長していることが新たに分かった。それとは対照的に、CM隕石では、半分以上のクラックは、コンドリュールの境界関係なく成長していることが新たに分かった。CM隕石に対して光学顕微鏡観測を行ったところ、クラックの成長にはその隕石が受けた水質変成が深く関係していることが初めて分かった。2023年度に小惑星ベンヌのサンプル粒子が地球に持ち帰られて、その内部観測と今回の結果を比較することで、小惑星表層に形成されるレゴリス層が、衝突によって形成されたのか、熱疲労によって形成されたのか明らかにすることができる。現在、論文執筆中である。 なお、今回の実験で得られた一部の知見は、Michikami and Hagermann, 2021, Icarus, 357, 114282とMichikami et al, Icarus 2022, 115007の査読論文における考察で活かすことができた。
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