木星と海王星の間に軌道を持ち、惑星と1:1共鳴に入っていない天体をケンタウルスと呼ぶ。ケンタウルスは4個の巨大惑星からの摂動を受けるため軌道が不安定で、力学的寿命は数百万年から数千万年と短い。そのため、ケンタウルスの起源は海王星以遠にある天で、それらがケンタウルス領域に定常的に供給されているのだと考えられている。この物質移動に重要な役割を果たすのが、海王星をはじめとする惑星との重力相互作用である。最初は海王星とのみ相互作用を持つ軌道にあった天体が、天王星、土星、木星とより内側の惑星と軌道交差するように進化する。以上の進化では、惑星重力の影響は近接遭遇による散乱という形で記述できる。よって、ケンタウルス領域には惑星が4個あるが軌道進化の素過程は制限三体問題で記述できる。 令和5年度は、令和4年度に開始した、ケンタウルスの軌道進化を円制限三体問題の重ね合わせによる記述と天体の動径方向移動や軌道離心率・軌道傾斜角の変化の傾向の解析的表記の妥当性を数値計算を用いて評価した。特に、ある惑星の重力支配下にあった天体が別の惑星の重力支配下へと遷移する過程に着目した。よく知られた円制限三体問題の保存量であるティスランパラメタ(ヤコビエネルギーを近似し軌道要素で表したもの)を、惑星が2体以上ある系において変化量として扱い、その変化率と軌道要素の変化率を関係づけた。
|