研究課題/領域番号 |
20K04058
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
島田 照久 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (30374896)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 下層冷気 / 極端現象 / 亜寒帯海域 / 海上風 / 気象シミュレーション / 冷夏 / 衛星観測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「広域かつ高解像度の気象シミュレーションに、下層冷気の変動解析に効果的な温位座標解析を適用して、亜寒帯海域起源の下層冷気が夏季に発生した2つの極端現象(豪雨と低温)の発生に与えた影響を解明すること」である。令和2年度は、2019年7月の低温事例について解析を進めた。主な成果は下記の通りである。1)衛星観測による海上風データと大気再解析データを用いて、対象とする現象の実態把握を行った。東日本から西日本にかけての広域で平年に比べて低温偏差であった。北東北・北海道では気温は正偏差であったものの、北海道で雲量の正偏差・日射の負偏差が顕著に現れていた。また、2019年7月は、オホーツク海高気圧が間欠的に発達していたが、南よりに存在することが多かった。そのため、北海道に流入する南東風が太平洋側で雲量増加に寄与したと考えられる。2)2019年7月の事例について、最新の大気再解析データを境界条件として入力し、気象モデルによるシミュレーションを実施した。シミュレーション結果を衛星観測と大気再解析データと比較した結果、よく再現できていることがわかった。また、温位座標解析を用いて、下層冷気データを作成することができた。3)気象官署のデータを用いて、日射の経年変動を調べ、今回研究対象とする期間の位置付けを調べた。2019年と2020年の7月は、変動の大きい地点についてみると、過去50年程度のデータ期間中の上位に位置することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のことから、研究は概ね順調に進んでいる。1) 令和2年度に、事例解析を行う現象についての実態を把握できた。また、比較研究を行うための新しい事例を特定することができた。2)今後の解析やシミュレーションに必要なデータを整備し、気象シミュレーション解析を実施した。また、下層冷気データを作成し、その解析を進めている。3)今後の研究を実施する上での問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、令和2年度に実施したシミュレーションの解析結果、観測データの解析結果を取りまとめる。また、2つ目の研究対象である、平成30年7月豪雨に関する事例研究を開始する。シミュレーションの実施、再現性の検証、下層冷気データの作成と解析を行う。研究計画の変更が必要となる問題は生じていない。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、ハードディスクが予定より多く必要になったのでサーバーの購入を見送ったことと、コロナ禍のため学会がオンライン開催となり旅費が不必要になったことによる。この次年度使用額は、当初の予定通り、高スペックのサーバーの購入にあてて研究の効率化を図る。
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