研究課題/領域番号 |
20K04060
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
岩坂 直人 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60211760)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中央モード水 / 太平洋10年規模現象(PDO) / 北太平洋海面水温第1主成分 / 北太平洋海面高度第1主成分 |
研究実績の概要 |
北太平洋中央モード水(CMW)の変動を代表する指標として体積時系列を作成し、年々変動の特性を調べ、年々変動とともに10年規模変動が卓越することを示し た。またCMW体積変動は北太平洋海面水温偏差変動と海面高度偏差変動のそれぞれの第1主成分変動時系列と高い相関を示すことがわかり、これらの海面における卓越する変動とCMW体積変動は一体の変動である事、すなわち太平洋10年模変動現象(PDO)であることが分かり、中央モード水体積変動はPDOの1つの側面を示して いる事が分かった。 さらにCMW体積変動はCMW分布域では亜表層の密度変動と高い相関を示すこと、分布域から北東の海域では亜表層から主密度躍層より下の少なくとも1750mにまで 高い相関を示す領域が伸びていることが分かった。またCMW体積変動に関係する大気場の変動もPDOに整合的な変動を示すことが分かった。これらの結果からCMW 分布域では体積変動が亜表層の密度場の変動に結びつくことで海面水温場に影響していることが推測され、またPDOに関連した風の場の回転鉛直成分が分布域の 北東海域の中層にまで及ぶ変動を引き起こしていることが示唆された。 CMW形成に関わるサブダクション年率の変動との比較では、中央モード水分体積変動はサブダクション年率変動である程度定性的にも定量的にも説明可能である ものの、説明のつかない時期も見られることから、サブダクションの過程にはここでもちいたサブダクション年率推定法では表しきれない中規模渦変動などの関 与も考慮することが必要ではないかと推測している。CMW分布域の海面水温変動は、北側の領域ではPDOにともなう冬季アリューシャン低気圧の勢力、位置の変動に対応した海面熱収支変動が主たる変動要因と考えられるが、CMW分布域の南側半分では、亜表層のモード水の体積変動が直上の等密度面深度変動をもたらし、それが海面変動に影響することも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果をまとめて2024年4月26日にJournal of Oceanographyに投稿したが、3度改訂をもとめられ、4度目の審査中である。
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今後の研究の推進方策 |
計画期間内に成果をえることが出来たものの、論文として公表するための準備に時間がかかったが、R6年度に論文として公表する事が出来る見込みである。 今後は、この研究で課題として残った中央モード水分の形成量年々変動等についてさらに研究を進める。これについては既に2023年度基盤研究(C)「北太平洋中 央モード水形成域のサブダクションに関する研究」が採択されており研究を続ける。また、海面水温変動と中央モード水体積変動との関係について各海域での特 性をさらに考察し、北太平洋の海面水温変動メカニズム解明に資する研究を行う予定である。とくにMOAAGPV以外に数値海洋モデルOFES2を使って解析対象期間を延ばし、変動メカニズムの解析を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿中の論文の審査が長引いているため。
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