研究実績の概要 |
本研究の目的は, 鉛直方向にもスペクトル法を用いた3次元スペクトルメカニステック大気大循環モデル(MCM)を構築し, それを高度に最適化・並列化することによって高速動作するように整備して本研究自体および研究コミュニティでの活用に寄与すること, および, 整備されたMCMを用いて初めて可能となる大気力学研究に対する新たなアプローチを試みることである. 最終年度である2023年度は, 2022年度までに開発した3次元スペクトルMCMを用いて, 先行研究のベンチマーク実験設定でQBO(準2年振動)的振動が生じるかどうかを調べ, さらに差分法のモデルとの比較により, QBO的振動が発生するかしないかは, 鉛直離散化手法および解像度に大きく依存することを明らかにした. また, このモデル開発に関連した派生的研究として, 2022年のトンガの噴火で検出されたPekerisモードに関して, その等価深度を精密に与える手法を提案した. 後者については, 2023年度中に2本の査読付投稿論文として発表済みである. 研究期間全体の成果としては, 本研究の最大の目的であった3次元スペクトルMCMの構築に成功しており, その成果は2022年度に査読付投稿論文として発表済みで, JMSJ論文賞も受賞するなど, 学会でも高く評価されている. また, このMCMを用いた新たなアプローチの研究として, 2023年度に行った上記の研究だけでなく, これまで, 台風を意識した回転球面上の孤立した傾圧渦の移動に関する研究, 傾圧トイモデルにおける乱流の研究, 傾圧擾乱の時間発展に関する不安定周期軌道を求める研究, など, 新たな研究手法の開拓も行っており, 当初の研究目的は十二分に達成されたと考えている.
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