研究課題/領域番号 |
20K04067
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
廣田 渚郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (30750616)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気候感度 / 気候モデル / 対流 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、気候モデルにおける対流表現と雲フィードバック・気候感度の関係を調べ、気候変動予測の不確実性を理解し、制約することである。2020年度は、世界の研究機関で開発されている気候モデル(CMIP3, 5, 6モデル)による数値実験データの解析を行った。その結果、気候モデルによる地球温暖化予測において、亜熱帯海上の雲量減少に伴う温暖化の加速効果が十分に働いていないことを示した。 亜熱帯海洋上には、大気が上下に混ざりにくい安定層があり、背の低い雲(下層雲)が生成されている。下層雲は、太陽光を反射して地球を冷却する。また、下層雲は将来温暖化の進行に伴い減少すると考えられている。そうすると、雲による冷却効果は弱くなり、温暖化は加速する(正の雲フィードバック)。しかし、多くの気候モデルには、現在の下層雲量が観測に比べて少ない誤差(バイアス)があり、将来この正の雲フィードバックが働きにくいことがわかった。現在の下層雲量の過少バイアスは、地表付近で温められた空気が上昇して大気を混合する対流プロセスが、モデルでは活発過ぎて、下層雲の形成に必要な安定層の発達が妨げられていることが原因として考えられる。雲フィードバックと対流活動度との関係から、雲フィードバックの確からしい値を0.5~3.4 Wm-2℃-1と推定した。これは、温暖化予測に関わる雲フィードバックの不確実性を、日々の対流の活動度との関係から、世界で初めて制約した成果である。地球温暖化予測を精確に行うためには、雲・対流プロセスの理解を深め、モデルを高度化していくことが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、世界の多数の気候モデル(CMIP3, 5, 6)の実験出力の解析と、日本の気候モデルMIROCによる数値実験を予定している。2020年度はCMIPデータの解析を行った。最新のCMIP6データは、2020年度までにその大部分が公開され、そのデータをいち早く整備し、解析を行った。その結果、気候感度の不確実性に関わる対流の重要な役割を示すことができた。その成果は2021年度に国際学術誌で発表される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、日本の気候モデルMIROCの数値実験を行い、対流が雲フィードバック・気候感度に影響する仕組みを、モデルの対流設計と結び付けて理解したい。まず、MIROCを用いて、対流に関わるパラメータを変化させる感度実験を行う。例えば、MIROCでは、対流エネルギーは大気不安定度に比例するが、その比例定数パラメータが異なる実験を行う。その時、対流・雲・気候感度を関連付けるプロセスがどの様に変化するかを調べる。本研究課題の気候変動予測の不確実性に関わる知見が、MIROC開発にも活かされることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品が予定より400円安かったため。
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