研究課題/領域番号 |
20K04069
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
下川 信也 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 総括主任研究員 (40360367)
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研究分担者 |
村上 智一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (80420371)
河野 裕美 東海大学, 沖縄地域研究センター, 教授 (30439682)
水谷 晃 東海大学, 沖縄地域研究センター, 技術職員 (80773134)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サンゴ / ウミショウブ / 西表島 / 網取湾 / 崎山湾 / 生態分布調査 / 海洋大気河川観測 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
サンゴ等は,熱帯・亜熱帯の海の多様な沿岸海洋生態系を形成し,人間にも多様な恩恵をもたらしている.しかし,現在,琉球諸島をはじめ世界中で多くの沿岸海洋生態系が危機に瀕している.その保全のためには,空間的側面だけでなく時間的側面も含めた沿岸海洋生態系のモニタリングとその物理環境との関係の解明が必須であるが,研究はいまだ十分でない.そこで,本研究では,国内唯一の海域の自然環境保全地域である西表島の崎山湾・網取湾自然環境保全地域を対象として,サンゴ等に関わる物理環境を,生態分布調査,海洋大気河川観測,数値シミュレーションを総合的に活用し,定量的に解明する. 本年度は,西表島北西部白浜地区に,環境観測システムを設置し,気象データの取得を開始すると共に,網取湾において,サンゴ被度,一斉産卵の日時,産卵率等の調査,及び,ADCP・水温計等による波高・流速・流向・水温等の観測を実施した. また,これまでに取得した調査・観測データを利用して,2016年に発生したサンゴ大規模白化の前後におけるサンゴ幼生の分散・滞留の状況と物理環境との関係について,検討した.その結果,白化の影響で2017年に37.5 %まで減少した産卵率が,2019年には90.0 %まで回復したこと,白化前の2016年は,他の年よりも放出された幼生数が多いことに加え,一斉産卵後の北寄りの風向によって,幼生の湾内の滞留率が高く,外洋への到達率が低くなったことなどを明らかにした. 加えて,網取湾における温暖化時の強大台風に匹敵する台風下での海水流動特性について検討した.その結果,網取湾を通過する台風経路の違い,すなわち,25m/sを越える風速を持つ台風であっても湾内への風向の違いによって,水面表層から下層までの流速の発達および下層への運動量輸送過程に明確な違いのあることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響で,年度前半は,現地での調査・観測がやや遅れ気味であったが,後半にはそれらを補強する目的も含め,新たな環境観測システムを西表島北西部白浜地区に設置し,観測をはじめた.これまで取得した調査・観測データを整理・活用することにより,研究を推進することができたため,おおむね計画通り,進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,西表島網取湾において,サンゴ被度・一斉産卵日時・産卵率等の調査および台風時を含めた波高・流速・流向・水温等の観測を実施し,調査・観測データを蓄積する.加えて,それらのデータを活用した数値シミュレーションを実施し,物理環境の時空間分布を取得し,サンゴ分布・幼生分散滞留等と物理環境の関係の解明を進める.
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