研究課題
黒潮大蛇行流路の安定モードと不安定モードについて,各流路への海底斜面と陸岸地形の効果を考慮して理論的に解析するための流路方程式モデルの構築を行うための手法の検討を行った.その結果,非大蛇行流路がStommel-Munkの西岸境界流解で表現されるのに対し,大蛇行流路が慣性流の蛇行で表現でき,安定モードでは不安定モードよりも境界流と慣性流の変換点がより東にあると予想し,そのモデル化を試みた.このモデルは,これまでに日本南岸で行った海底圧力データの解析から得られた流路の違いによる海底制御の強弱とうまく整合すると考えられる.さらに,東北沖まで北上している黒潮で観測することで,日本南岸沖を流れる黒潮の流路と海底斜面の関係を解明するヒントが得られると考え,東北沖でウェーブグライダーによる観測を行いデータを取得することができた.また,経年スケールで変化する黒潮流路の海底制御に関わる黒潮の流速構造を生じる原因を探ることを目的として,黒潮源流域の係留ブイデータの解析を行った.その結果,エルニーニョやラニーニャによって主水温躍層付近より上層の水塊が変化していることが分かった.黒潮源流域における鉛直流域が存在し,それがエルニーニョやラニーニャによって変化すると予想していたが,係留ブイデータの解析から,このことを検証することができた.その結果をAsia Oceania Geosciences Society (AOGS) 2023で発表した.黒潮源流域の観測航海にて,係留ブイの入れ替えを行い,係留ブイデータの回収と鉛直的に高解像度の船舶データを取得することができた. 本研究課題は,国際的な黒潮観測プロジェクト2nd Cooperative Study of Kuroshio and Adjacent regions (CSK-2)に貢献しており,当該年度は,CSK-2の運営委員会で進捗状況を報告し,CSK-2の今後の国際的な共同観測の策定に重要な情報を提供を行なった.
3: やや遅れている
これまでに得られたデータ解析の結果をもとに,流路方程式モデルの改良を試みたが,十分に改良できていない.流路方程式モデルの改良は予定通り進まなかったが,東北沖の海底斜面を北上している黒潮のデータを取得することができた.このデータは,今後,流路方程式モデルの改良に役立つと思われる.また,黒潮源流域の現場データの取得とその解析も実行中であり,LADCPデータとCTDデータを用いた解析も実施中である.このように有用なデータの取得には成功したものの,モデルの改良が進まなかったため,やや遅れていると評価した. そのため,研究期間を1年延長することとした.
来年度は,引き続き今年度までに得られた知見をもとに,流路方程式モデルの改良とそれを用いた解析を行う.加えて,黒潮源流域の係留ブイデータの解析を進める.
流路方程式モデルの改良が進まなかったため,学会発表等のための旅費を使用しなかった.来年度,学会発表等の旅費や論文の投稿費等に使用する予定である.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件)
SOLA
巻: 19 ページ: 289~297
10.2151/sola.2023-038
Ocean Dynamics
巻: 73 ページ: 761~771
10.1007/s10236-023-01580-w