研究課題
北極海はCO2吸収域として知られているが、長く氷に閉ざされた北極海での観測は非常に困難で、地球温暖化に伴う環境変化に対して、北極海のCO2吸収量がどのように変化するのかは、よくわかっていない。本研究では、最新の観測データに基づく推定の更新と、数値モデル実験結果との比較を通して、CO2吸収量がいつどこでどのくらい変化しているのかを明らかにする。本研究の結果は、地球全体の炭素収支の定量化、ひいては地球温暖化の将来予測の不確実性低減につながると期待される。これまでの研究により、観測データが多ければ多いほど、推定値の不確実性が小さくなることがわかっている。そこで、国際的なデータベースSOCAT(The Surface Ocean CO2 Atlas)から、最新の海洋CO2分圧の観測値をダウンロードし、大気海洋間CO2交換量推定の更新を行う。2020年度に、推定期間を2014年12月までから2018年12月までに拡大した。一般に、推定値は、その手法により、系統的な誤差を生みやすいが、異なる方法による推定結果を合わせて解析することにより、不確実性を小さくすることができる。そこで、広域の大気海洋間CO2交換量の推定結果や、数値モデルによる計算結果を用いることで、北極海における大気海洋間CO2交換量に関して、いつどこでどのくらいの変化が起こっているのかを定量的に明らかにする。また、推定値の差が大きい場合には、その要因を調べ、推定方法の改善を模索する。2020年度は、米スクリプス研究所や独マックスプランク研究所、海洋研究開発機構の研究者から推定結果の提供を受け、相互比較を開始した。2021年度は、国際プロジェクト地域炭素収支評価(Regional Carbon Cycle Assessment and Processes; RECCAP)phase2の枠組みで収集された20を超える推定値から、北極域を切り出し、相互比較を開始した。2022年度は、北極海全体および各海域のCO2吸収量を、その不確実性を含め、定量的に評価した。
3: やや遅れている
新型コロナの影響で、RECCAP2のデータ提出期限が延長され、本研究で使用するデータが揃うのが遅れたため。
研究計画を1年延長し、論文投稿と学会特別セッションでの発表を行う。
使用予定だった相互比較データの提出期限が延長され、学会特別セッションや論文特集号も1年延期になった。それらに対応するため、研究計画を1年延長し、学会の旅費と参加費、論文投稿料として使用する。
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すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
http://sao.gp.tohoku.ac.jp/ arctic-ocean-air-sea-co2-flux/