• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

季節予測シグナルとノイズの境界領域の制御プロセスの理解と予測の改善

研究課題

研究課題/領域番号 20K04074
研究機関国立研究開発法人海洋研究開発機構

研究代表者

土井 威志  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 主任研究員 (80638768)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード日本の月平均気温偏差の1ヶ月予測精度 / シグナルとノイズの比 / アンサンブル位相空間での共変動解析 / 東アフリカの短い雨季の季節予測
研究実績の概要

日本付近で領域平均した月平均気温偏差の予測精度の季節性を、1ヶ月先(例えば11月初旬から12月を予測する場合)の精度に注目し、「SINTEX-F」の最新版による1983-2020年の過去再予測結果(108アンサンブルメンバー平均)とNCEP/NCAR再解析データとの相関係数で評価した。線形トレンドは除去した。その結果、Persistent予測(予測開始時期の状況が持続すると仮定した予測。その精度は自己ラグ相関係数に相当)の精度を上回るのは、9月の予測のみであった。再解析データを基準として、9月の気温偏差が0.5度Cより高い年を選んで合成解析を実施したところ、エルニーニョ・南方振動の影響が大きいことを見出した。興味深いことに、12月の予測に注目し、シグナルとノイズの比(SN比: ここでは、アンサンブル平均値をシグナル、アンサンブルスプレッドをノイズとして、その比で定義した)の経年変動に注目し、SN比が平年より高い年の15年のみを対象に相関係数スキルを計算すると0.67で、それ以外の23年間で計算したスキル-0.15と比べてはるかに高精度であり(差は99%の信頼限界で有意)、Persistent予測の精度を上回ることがわかった。さらに、アンサンブル位相空間での共変動解析を実施することで、12月の日本の気温予測の鍵になるのが、インド洋熱帯域西部の高温偏差や、熱帯太平洋のエルニーニョモドキ的な構造であることを示した。
東アフリカでは、10-12月に短い雨季があるが、2021年は極端な干ばつにより深刻な被害を受けた。SINTEX-F季節予測システムによるシミュレーションの結果、2021年の干ばつを引き起こしたのは負のインド洋ダイポールモード現象であることを示した。さらに統計関係を利用することで、その予測が6月時点でも可能であることを見出した

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

準リアルタイムの季節予測情報として、アンサンブル平均値だけでなく、SN比やアンサンブル位相空間での共変動解析結果も併せて提供することで、各々の予測の精度や予測の潜在的根拠についてより踏み込んだ情報を提供できる可能性があることが示唆できた。また、それらの情報は、ユーザー側が季節予測結果をさらに深く理解し、その適切な利活用を促進するための一助になると考える。その内容は国際査読誌に出版した。さらに、それを準リアルタイムに提供する準備を整えた。
東アフリカの、10-12月の短い雨季に対して、SINTEX-F季節予測システムによるミュレーションと東アフリカの降水量変動を推計する統計モデルを組み合わせることで、同年6月の時点で干ばつ予測が可能であることがわかった。この新しいハイブリッド予測システムによる早期予測は、甚大な被害を緩和する準備期間を用意できることになり、極めて効果的である。その内容は国際査読誌に出版した。2022年も2021年と同様に、東アフリカは深刻な旱魃と食料危機にみまわれたこともあり、大きな反響があった(例えば、NatureのResearch Hightlightでも取り上げられた)。今後は東アフリカの雨季の予測情報をリアルタイムに提供するようWebサイトを改修した。
アンサンブル位相空間での共変動解析を活用して、予測可能性の潜在的なソースや起こりうるテレコネクションなどを、日本の気温や東アフリカの降水に関して見出した成果を創出し、かつその情報をリアルタイムに提供することを達成した。概ね研究が順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

「SINTEX-F」の最新版による1983-2020年の過去再予測結果(108アンサンブルメンバー平均)のアウトプットに対して、アンサンブル位相空間での共変動解析を活用して、予測可能性の潜在的なソースや起こりうるテレコネクションなどを探索した成果を創出できた。今後は、アンサンブル位相空間での共変動解析によって示唆された予測可能性の潜在的なソースや起こりうるテレコネクションなどについて、数値実験をデザインして、実際にどのように予測シミュレーションに反映されるかを検証し、アンサンブル位相空間での共変動解析の有効性を議論していきたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍において、旅費として計上していた分は、次年度以降の旅費として使用する計画である。本年度は、使用するスーパーコンピュターのバージョンアップに対応して、従来使用していたプログラムの高速化調整に時間を要した。大量の数値計算を効率的に実行できる素地が整ったため、次年度は、その数値計算結果をアーカイブするストレージを増強するために未使用額を使用する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Can signal-to-noise ratio indicate prediction skill? Based on skill assessment of 1-month lead prediction of monthly temperature anomaly over Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Doi Takeshi、Nonaka Masami、Behera Swadhin
    • 雑誌名

      Frontiers in Climate

      巻: 4 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fclim.2022.887782

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] On the Predictability of the Extreme Drought in East Africa During the Short Rains Season2022

    • 著者名/発表者名
      Doi Takeshi、Behera Swadhin K.、Yamagata Toshio
    • 雑誌名

      Geophysical Research Letters

      巻: 49 ページ: -

    • DOI

      10.1029/2022GL100905

    • 査読あり
  • [学会発表] シグナルノイズ比は季節予測精度を暗に示すのか?-日本周辺における1ヶ月先の気温予測の精度調査 より-2022

    • 著者名/発表者名
      土井 威志・野中 正見・Swadhin Behera
    • 学会等名
      日本気象学会2022年春季大会
  • [学会発表] On the predictability of the extreme drought in East Africa2022

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Doi, Swadhin K. Behera, and Toshio Yamagata
    • 学会等名
      JpGU2022
  • [学会発表] 2021年に発生した東アフリカの極端な干ばつの季節予測可能性と負のインド洋ダイポールモードの影 響についてーSINTEX-F季節予測シミュレーションの結果よりー2022

    • 著者名/発表者名
      土井 威志・Swadhin Behera,山形 俊男
    • 学会等名
      日本海洋学会2022年度秋季大会
  • [学会発表] On the Predictability of the Extreme Drought in East Africa2022

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Doi, Swadhin Behera, Toshio Yamagata
    • 学会等名
      AOGS2022
    • 国際学会
  • [備考] SINTEX-F季節予測システム

    • URL

      https://www.jamstec.go.jp/aplinfo/sintexf/seasonal/outlook.html

  • [備考] 東アフリカの極端な干ばつを数ヶ月前から予測可能に! ―負のインド洋ダイポールモード現象の予測が鍵―

    • URL

      https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20221122/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi