研究課題
降下式ドップラー流速系観測の耐ノイズ性を定量化すべく、数値シミュレーションを行った。Garrett-Munk 内部波場に 1.05 f (f は慣性周期) より小さな周期をもつ近慣性波パケットを重ね合わせた速度場の中で 4000 m 深に相当する疑似観測を行い、近慣性波の振幅を推定するというモンテカルロ法を行った。疑似観測の降下時と上昇時の間隔が長いほど解は安定し誤差は減少した。また慣性周期が短くなる高緯度ほど解は安定し誤差は減少した。しかし降下時と上昇時の間隔が 100 分を超える深度で緯度 50 度という好条件であっても、推定される三角関数の係数の相対誤差は 100 % 近かった。これは近慣性波の振幅の相対誤差にして 50 % ・位相の誤差にして 30 度に対応し、定量的な物理理解のためには大きすぎるといわざるを得ない。間欠的 intermittent な現象で水平速度でしか観測できない近慣性波の観測数を増加させることを目的にしたデータ処理方法であったが、普遍的な内部波スペクトルの下でのシミュレーションによればこの方法では近慣性波の定量的理解は難しいことが分かった。通常の温度塩分多層観測ではひとつの観測点で一度しか観測機器を投入しないが、同じ点で複数回観測する(いわゆるヨーヨー観測)を行えば、近慣性波の観測が可能であることも分かった。たとえば緯度 30 度で 6 時間に一回の投入を行えば振幅 0.05 m/s 位相 15 度の分解能で近慣性波が観測できる。
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巻: December 04, 2022. ページ: -
10.1002/essoar.10512991.1