研究課題/領域番号 |
20K04077
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴木 立郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), グループリーダー代理 (10415995)
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研究分担者 |
小室 芳樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), グループリーダー (90396945)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海洋熱吸収 / 気候システム / 海洋モデル / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
海洋は気候システムの熱慣性に支配的な役割を果たし、地球温暖化時の余剰熱を吸収することで急激な気候変動を抑制するため、海洋熱吸収過程の解明は将来の気候予測に不可欠である。特に、低温・高密度の海水は高緯度の深海に沈み込み、気候システムの熱輸送に不可欠な大規模海洋循環に重要な役割を果たしている。近年の観測では、深層水の形成が弱まり、下層海洋の温度が上昇していることが指摘されている。また、国際的な気候モデル相互比較プロジェクトであるCMIP6における温暖化予測実験では、参加する多くの気候モデルにおいて、温暖化の進行に伴って深層水の形成が減少することが示唆されている。本年度は、CMIP6の国際共同研究の枠組みを利用して、海洋の熱吸収効率(OHE)と温暖化時の気温上昇の関係についてのモデル間の相互比較研究を行った。理想的な温暖化実験における海洋内部への熱輸送は、気候場における大西洋の深層循環の強さと高い相関を持っている。この深層循環の強さのモデル間のばらつきは、熱帯域などでの地表気温上昇に伴う海洋熱吸収増加と共に、温暖化時の気温上昇の予測に大きな影響がある。この成果は国際学術誌に投稿した。さらに、温暖化時のより詳細な海洋の熱的応答のメカニズムを明らかにするため、高解像度の海洋モデルの開発をすすめ、温暖化時の海面境界条件で駆動することによって、深層循環の変化が海洋上層の熱収支に与える影響の解析を進めた。また、アウトリーチとして、この高解像度モデルでトンガの気象津波の再現にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CMIP6モデル比較による海洋熱吸収に関する研究は順調に進んでいる。また、高解像度海洋モデルを用いた温暖化影響評価実験も順調に実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展しているため、基本的に当初予定通りに数値実験結果の解析を進め、海洋熱吸収のメカニズムの理解を進める。さらに、高解像度海洋モデルを用いた温暖化時の熱吸収変化の解析も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究情報収集、成果発表のために参加を予定していた国際研究集会が延期もしくは中止となったため未使用が生じた。来年度は、国内外の出張を行うとともに、情報収集や国際誌への投稿などよる成果発表として予算を執行する。
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