研究課題
短時間で急速に発達する積乱雲の挙動の更なる理解は防災・減災の観点から重要である.本研究はひまわり8号日本域観測(2分30秒),X帯フェーズズドアレイ気象データ(PAWR: 30秒)を用いて積乱雲の短時間挙動を捉える.雲の光学的特性に着目し,雲の光学的厚さ,雲粒の放射有効半径を衛星データから推定,発達段階を診断する手法を「1つの積乱雲」に適用し,発達過程を精緻に観察することで危険な積乱雲の発達初期描像を明確にすることを目的とする.最終年度となる2022年度は再度事例解析を実施した.2020年9月4日の事例について,大学建物屋上に設置され 4方向に向いたMAX-DOASより推定された可降水量データを,エコー検出後の挙動に着目するためW帯 FMCW 雲レーダ (FALCON-I)のドップラースペクトルを利用した.さらに X帯PAWRエコーとW帯FMCWエコー比である DFRm (measured Dual Frquency Ratio) を計算し,発達初期の積乱雲の粒径に関する描像を描くことを試みた.ファーストエコー検出前のMAX-DOASの可降水量とマイクロ波放射計のそれは,北向きMAX-DOAS データと定性的に傾向は一致した.W帯FMCW雲レーダのドップラースペクトルデータからは,ファーストエコーが確認された18:25の後,18:30に高度1kmよりやや下に1.6-3.2 m/s および-3.2 m/s に高スペクトルが確認された.エコーの時間挙動からファーストエコー時すでに落下が始まっていたと判断される.DFRm は初期段階 (18:55-19:05) では 10-30dBZ,その後25-60dBZ(19:06-19:20)と大きくなった.Matrosov et al (2022) はDFRm が増大すると粒子半径Dが大きくなることを示し,本DFRm値の挙動変化も定性的には同様の挙動を捉えた.ただしその絶対値は先行研究より大きかった.
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