研究課題/領域番号 |
20K04085
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
土田 孝 広島大学, 防災・減災研究センター, 特任教授 (10344318)
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研究分担者 |
杉山 実 日本工営株式会社中央研究所, 中央研究所, 専門部長 (90463562)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土砂災害 / ニオイ / 土石流 / 現地観測 / ニオイセンサー / 土石流シミュレーション / ニオイ採取 |
研究実績の概要 |
土石流の前兆現象としてのニオイについて,「大きな土石流の前に小規模の土石流が先行して渓流内に堆積しニオイを放つ」という仮説の可能性を西日本豪雨災害の東広島市と竹原市の被災事例を用いて検討した。土石流シミュレーションで先行する土石流が発生した場合に渓流内で土砂が堆積する可能性のある緩勾配部分を抽出した。次に抽出箇所にニオイ発生源を置いたときの下流へのニオイの拡散をニオイ濃度移流拡散シミュレーションによって検討した。その結果,ニオイ発生源の濃度が臭覚限界の0.001倍以上の場合,到達距離は100~180mでニオイを感じたという証言のある下流の位置まで到達しなかった。しかし,ニオイの発生源が主に硫化水素であって臭覚限界が発生源の濃度の約0.0001倍程度と仮定すると,2か所の渓流でニオイが200m~300m離れた地点で感知されることはありうるという結果を得た。先行する土石流が大規模災害の前兆としてのニオイ発生の原因であることを証明するには発生するニオイの成分を分析し,その成分と人間の臭覚との関係を明らかにする必要がある。土中のニオイ成分の採取と分析を計画したが,コロナ禍により活動が制約されたため調査を2021年度に延期した。 京セラ㈱と共同でMSS嗅覚センサ計測モジュールの開発を進めた。計測モジュールを使い,屋外で動物のニオイの検知等を実施し性能を確認した。 ニオイをセンサーとして利用するには立地条件が厳しい渓流内での観測システムを構築する必要がある。2018年の西日本豪雨災害で大規模な土石流が発生した危険渓流内に地盤変位を測定する土石流センサーを設置し,地盤変位を定期的に観測する防災監視システムを構築し,計測を1年間継続した。昨年は大きな降雨がなく定常的な変化を越える変位は観測されなかったが,渓流内で安定した観測を継続するために必要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の研究目的の一つが、土中に存在し、災害時に発生するニオイの成分を分析し,その成分と人間の臭覚との関係を明らかにすることであった。ニオイのサンプリング方法の検討および西日本豪雨災害が発生した広島県内でのニオイの採取場所の検討を行ったが、緊急事態宣言が発令され、東京在住者が大学構内への立ち入りができなくなるなど、研究上の制約が大きかったため、本課題を2021年度に延期した。これが遅れの理由である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に自然環境における土のニオイの発生原因に関して、環境学の研究者の協力を得て関連する知見が得られた。また、ニオイを採取するための試料採取方法、分析方法に関する知見をまとめ採取の準備はできているので、土のニオイの採取と分析を実施する。 土石流シミュレーションおよびニオイの濃度移流拡散シミュレーヨンについては、現地の条件をより忠実に反映した方法に改良し、危険渓流におけるニオイセンサーの設置場所の検討を行う。 ニオイセンサーについては、危険渓流に設置して長期間計測を実施する観点からの改良を引き続き実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
土中に存在し災害時に発生するニオイの成分を分析し,その成分と人間の臭覚との関係を明らかにする計画で、ニオイのサンプリング方法の検討および西日本豪雨災害が発生した広島県内でのニオイの採取場所の検討を行ったが、緊急事態宣言が発令され、東京在住者が大学構内への立ち入りができなくなるなど、研究上の制約が大きかったため、サンプルの収集と分析を2021年度に延期した。また、併せて室内実験のためプロファイル型土壌水分計の購入を予定したが、広島大学内での実験ができないため、次年度に延期することとした。
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