研究課題/領域番号 |
20K04085
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
土田 孝 広島大学, 防災・減災研究センター, 特任教授 (10344318)
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研究分担者 |
杉山 実 日本工営株式会社中央研究所, 中央研究所, 専門部長 (90463562) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土砂災害 / ニオイ / 土石流 / 現地観測 / ニオイセンサー |
研究実績の概要 |
ニオイの発生が地下水位の上昇によるとする仮説の妥当性を検証するため,円形土層を用いたニオイ放出実験を行った.実験では土層底部から水を注入し地下水位を上昇させるパターンと,降雨を発生させることで地下水位を上昇させるパターンの2種類の実験を行い,地下水位と放出されるニオイ強度の関係を調べた.この結果以下のことがわかった。 1)土層底部から水を注入させるニオイ放出実験では,間隙空気とともに押し出されるという仮定についての妥当性は低い。しかし,地下水位が地表面付近に近づいたときに土層表面でニオイが観測されたことから,上昇する地下水位に吸着されたニオイ成分が地表面に近づくことでニオイが発生する傾向がある.本実験では土層が飽和する前にニオイが放出されているので,ニオイの観測を土砂災害の発生予測に活用できる可能性がある. 2)円形土層に降雨を浸透させたニオイ放出実験では,地下水位が地表面に到達し土層が完全に飽和しても土層表面にニオイが放出されることはなかった.実験終了後に,掘削した土層や土層底部に設置したピエゾメーターとしてのチューブに流れ込んだ水からニオイが感知できたことから,ニオイが失われたわけではなく地盤内に閉じ込められていたことが分かった.実際の斜面においても降雨によって地盤内にニオイが留まってしまう可能性が高いため,災害前後に放出されるニオイは別の原因やメカニズムによりもたらされていると考えられる. 住宅地の防災を目的として,広島県熊野町において土石流危険渓流に設置した地盤変位センサーによると計測を約2年半実施してきた。昨年7月に累積雨量322㎜の豪雨があり広島県内各地で土砂災害が発生した。しかし、計測地点ではすべてのセンサーで有意な地盤変位は観察されず、豪雨後に調査した結果でも渓流全体で土砂の流出はなかったことを確認した。また、高頻度の欠測に対応するため機器の交換を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ニオイセンサーにより公園等で土砂のニオイの測定を実施したが、土砂災害で発生するニオイのデータの収集はできなかった。広島県内で7月および8月の豪雨で土砂災害の発生があったが、コロナ禍のため機動的に現地に赴いて計測を行うことができなかったためである。次年度は現地でのニオイの観測を集中的に取り組みたい。この目的から広島県内の建設コンサルタント(復建調査設計㈱)に協力を依頼し、数種のニオイセンサーをあらかじめ配布し、降雨期の災害発生時の調査においてニオイ計測の協力を得ることとしている。 土石流危険渓流の原位置計測システムについては、変位を測定する土石流センサーによる計測を継続して実施したため、3年4か月のデータを収集できた。さらに計測の問題を解決するためバッテリー交換不要で計測間隔を短縮できる機器への交換を行った結果、安定した計測が可能となった。これらの成果を学会誌等に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の降雨期に、2年間実施できなかった災害発生時のニオイの計測を実施する。さらに土砂災害警戒区域内に多くの住宅地が存在する地域を対象としたニオイセンサーによる土石流センシングシステムの検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由はコロナ禍のため現地での観測などの活動が大幅に制約されたことである。その分の調査を次年度実施するため、降雨期の災害調査のための旅費、交通費として使用する計画である。
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