ニオイの発生が土砂災害の前兆現象の一つであることはよく知られているが,前兆となるメカニズムは十分に解明されていない。土砂災害の履歴を有する自然斜面において,深さ 0~3mの土中の間隙空気から高いニオイ強度が観測された。豪雨時において降雨が地盤に浸透する過程および下層から表層への地下水の供給により、表層地盤の間隙に存在するニオイを有する空気が地表に放出されて地表面でニオイが発生し、土砂災害の前兆となることが考えられる。この可能性を検討するため、ニオイ物質を混入した模型地盤を用いて,底部からの浸透実験と降雨浸透実験を行い、地表面でのニオイの発生を調べた。いずれの実験においても,地下水位の上昇と降雨浸透によって間隙空気が地表に放出される過程における地表面のニオイ強度の増加は、ほとんど無いかあるいは非常に小さかった。一方,地下水位が地表面付近まで上昇するとニオイ物質を含む地下水が接近することにより地表面で計測したニオイ強度は急速に増加した。以上の結果より,土砂災害の前兆現象としてのニオイの発生は,ニオイ物質を含む地下水が地表近くに到達することにより起こり得るといえる。 ニオイセンサーによる土石流検知システムを開発するため、土石流危険渓流に設置する地盤変位センサーと計測システムを作成し土石流が発生した渓流内にセンサーを設置して,観測を約3年間実施した。計測したデータの通信に低コストであるLPWAのLoRa方式を採用したが,通信の不調による欠測が高い比率で発生した。バッテリーの替わりに小型太陽光パネルを取り付けること、送受信のためのIoTデバイスを使用することで、通信不調による欠測は大幅に減少することができた。
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