研究課題/領域番号 |
20K04087
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
奥平 敬元 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (20295679)
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研究分担者 |
三田村 宗樹 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00183632)
石井 和彦 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30202930)
根本 達也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10572555)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 活断層 / 大阪平野 / 大阪層群 / 上町断層 / 3次元粘弾塑性体の数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
活断層の動きやすさや発生する地震の規模を評価する際,地震発生領域(深さ約10-15 km)における活断層の姿勢(走向・傾斜角)は最も重要である.しかし,地下深部での活断層の姿勢は,これまで厳密には評価されてこなかった.本研究は大阪平野において,(1)地下浅所での地層や活断層の3次元分布の詳細の把握と(2)断層の配置や形態をモデルパラメータとして3次元粘弾塑性体の数値シミュレーションを行い,得られたシミュレーション結果と地下浅所の3次元地質構造との比較から,活断層の表層から地下深部に至る姿勢を精密に推定することを目的としている. 本年度は,大阪平野地下のボーリングデータベースを利用し,地表から標高-40m付近までを構成する更新統田中累層の分布について詳細な検討を主に行った.標準層序となる深層ボーリング地点を通過する基準断面と東西-南北に交差する15の主要断面を作成し,田中累層に挟まれる海成粘土層(Ma1~Ma12層)を鍵層とし,岩相の特徴から4つの岩相ユニットに区分した.この区分に基づき,標高0mから標高-40mまでの10m毎の5つのレベル・スライスマップを作成し,平面的な地層分布を明らかにした.この地層分布から,上町断層は大阪平野北部から日本橋付近まで伸びる北部セグメントと,桜川から南東方に延び,花園町付近から南方に延びる南部セグメントに区分され,従来認められていた桜川撓曲はセグメント境界に位置する二次的な構造であることが明らかとなった.これらの結果は,既存の反射法地震探査や重力探査の結果とも整合的であり,上町断層の実態に迫る新たな見解を示すものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,主に大阪平野地下のボーリングデータベースを利用して,地下浅所での地層や活断層(上町断層)の3次元分布の詳細を把握する作業を行った.その結果,これまでにない重要な知見を得ることができた.一方,3次元粘弾塑性体の数値シミュレーションコードの開発は予定通りには進捗しなかった.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,堆積・浸食作用を考慮した3次元粘弾塑性体の数値シミュレーションのソースコードの開発を,令和3年度に引き続いて行う.また,令和3年度で著しく進捗した大阪平野地下のボーリングデータベースを利用した地下浅所での地層や活断層の3次元分布の詳細を論文化する予定である.さらに,GISによる微地形の抽出方法の開発と大阪平野における微地形解析を併せて行い,ボーリングデータベースによる地下地質構造と微地形の関連について考察を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は昨年度と同様に,研究成果発表の場としての国内外の学会の現地開催が新型コロナ感染症の影響で中止となり,オンライン開催に切り替えられたため,予定していた旅費などは使用しなかった.これにより,次年度使用額が生じることとなった.次年度も研究成果発表のため国内外の学会への参加を予定しているが,新型コロナ感染症の影響で旅費の使用の可否は現時点では不透明である.また,本年度は効率的に堆積・浸食作用を考慮した3次元粘弾塑性体の数値シミュレーションのソースコードの開発を行うためのPC(アップル社Mac Studio)購入費を物品費として計上する予定である.
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