研究課題/領域番号 |
20K04090
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
豊田 新 岡山理科大学, 古生物学・年代学研究センター, 教授 (40207650)
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研究分担者 |
横山 祐典 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10359648)
高田 将志 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60273827)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ESR年代測定 / 石英 / 堆積物 / 第四紀 / 常磁性格子欠陥 / 自然放射線 |
研究実績の概要 |
ガンマ線照射によって生成する信号には、熱的に不安定な成分が含まれる可能性があり、これを除去して安定な成分のみを用いて総被曝線量を求め、年代測定を行うことが適切である。日本のテフラ2試料とブリスベン川河川堆積物の石英について、観測されるAl中心、Ti-Li中心の熱安定性を、naturalと照射した試料について比較し、年代測定プロトコルの開発のための基礎実験を行った。加熱実験の結果と別の手法で推定されている年代と比較して検討したところ、日本のテフラについては、Al中心はそもそも熱的に不安定であり、これを用いた場合には年代を過小評価する可能性が高いことがわかった。一方、Ti-Li中心については、熱的に安定な成分と不安定な成分があり、照射によって一部に熱的に不安定な成分が生成することがわかった。照射後、測定前に加熱することでこの成分を除去するのが適切であると考えられるため、適切な加熱温度について検討した。加熱実験結果からは260℃15分の条件が適切であることがわかったが、実際に適用してみたところ、この加熱(preheating)の効果の総被曝線量の値に対する影響はかなり小さいことがわかった。しかし、原理的にはこの preheat を行って、安定な成分を用いて年代測定を行うのが適切であると考えられる。ブリスベン川現河床堆積物については、Al中心の方が、Ti-Li中心よりも熱安定性が高いという実験結果が得られた。試料によって信号の熱安定性が異なることが明確に確認でき、このことは試料ごとに熱安定性の確認が必要であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のため実験があまり進まなかったこと、信号の熱安定性の検討に思いのほか手間がかかり、当初の想定より機構が複雑であり、その解明に時間を要した。また、能登半島の堆積物試料がほとんど石英を含まず、年代をクロスチェックするのに適さない試料であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られている光に対する信号の特性と合わせて、測定プロトコルの開発を目指す。コロナ禍が収まりつつあり、試料採取に出かけられるようになったため、年代のクロスチェックに適切な試料を至急検討し、採取を行って、OSL年代と比較して測定プロトコルの検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、研究を進めることができない時期があり、物品の消耗が少なくなった。また、対面での研究打ち合わせ、試料採取を控えたため、旅費が少なくなった。研究の遅れを取り戻す過程でこれらの繰り越した経費を使用する。
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