現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)レーダーシミュレーターの改良を行いρhvを含む4つの粒径分布パラメータ(D0, Nw, μ, ρhv)から3つの偏波パラメータ(Z, Zdr, Φdp)を計算し、(D0, Nw, μ, ρhv)=>(Z, Zdr, Φdp)のテーブルを作成した。 (2)作成したテーブルを元にこれまで推定することが難しかったμを含む3つの偏波パラメータをレーダーの実データから試験的に計算し、特にμの空間分布を世界で初めて推定した(精度検証はこれから)。 (3)一方、シミュレーションを行う過程で本研究で提案する手法は雨滴の温度に対する依存性があることが予想された。これは本研究に用いるC帯(波長約5cm)の電波では水の複素屈折率が温度によって大きく変わるためである。そこで本手法に対する雨滴の温度の影響を評価した。その結果、例えば雨滴の温度の誤差が10度程度であれば推定されるμの誤差はほぼ無視できるが、例えば30度では8%の誤差が生じることがわかった。その結果については日本気象学会で公表した。 その一方、本課題で開発した手法の検証は昨年度の地上観測データを用いて行う予定であった。具体的には昨年度、関東地方は台風を含む強雨事例が複数発生したので、本人らが維持・運用する関東地方の地上観測装置により取得したこの時のデータを基準にして本手法の検証を行う予定であった。しかし現地でデータを保存するPCがネットワーク経由でサイバー攻撃を受けたため、ネットワークを一時的に外し、また新型コロナのため出張が制限され地上観測装置のメンテナンスが行えなかったなど当初想定していない事態が発生した。緊急事態宣言解除後に現地で確認すると、十分なデータの保存ができていなかったことが判明した。そこで現地で地上観測装置のメンテナンスを行うとともに、セキュリティの強化を行なった。
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