研究課題/領域番号 |
20K04093
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
名和 一成 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (20262082)
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研究分担者 |
大園 真子 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (10623837)
今西 祐一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30260516)
本多 亮 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (70399814)
岡 大輔 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主査 (70733640)
白川 龍生 北見工業大学, 工学部, 准教授 (50344552)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 道東 / 地殻変動 / マグマ活動 / セイシュ / 地下水 / 土壌水分量 / 積雪 / 重力計 |
研究実績の概要 |
本研究は、火山や地震など地殻活動域である道東カルデラ火山地域の重力場を、長期間、高時空間分解能で把握することを目的としている。屈斜路カルデラ周辺を対象フィールドとし、長期に安定で連続観測可能な超伝導重力計と、ドリフトフリーな絶対重力計、可搬型で連続測定も容易なスプリング式相対重力計を効果的に組み合わせて使用し、地下のマグマ活動や断層運動、それらに関係する物性変化や地表変形に伴う重力変化の検出を目指す。地下からの重力シグナルは微弱なため、それとレベルの重力変化を生じうる環境擾乱を高精度に把握し分離することも課題である。 2018年11月に弟子屈観測所においてiGrav型超伝導重力計(#017)による連続観測を開始して以降、毎年冷凍機交換等の保守作業を行い、順調に観測を継続している。超伝導重力計のスケールファクターとドリフト検定を目的として絶対重力計FG5(#241)と並行観測を2019年、2020年に引き続き実施した。多点同時観測用にスプリング式のgPhone重力計を新たに導入した。gPhone重力計は仁伏で一時的に連続測定を行った後、積雪期前に弟子屈観測所に移設し、超伝導重力計との並行観測を開始した。導入済みのCG5, ED型重力計については、それぞれ仁伏と屈斜路点で冬季の連続測定を実施した。重力観測への影響を定量化するために、前シーズンに引き続き、簡易積雪重量計およびタイムラプスカメラによる積雪観測を継続した。屈斜路湖の北端と南端に水位(水圧)計を設置し、連続測定を開始した。さらに、地面振動やセイシュに与える気圧変化の影響を調べるため、仁伏と弟子屈において、高精度微気圧計による連続観測を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
取得した重力データを解析し、長周期の帯域では、2020年から2021年にかけても、これまでと同様に積雪期に重力減少が生じていることがわかった。減少した重力が増加する様子は前の2シーズンの急増とは異なり、回復が緩やかだった。また、単純な陸水重力変化モデルでは説明しきれない短期的な季節内変化も生じていることがわかった。初年度に観測準備を整えた屈斜路湖における水位(水圧)の観測を開始し、夏季から冬季にかけて連続データを取得することができた。低気圧や前線の通過によるセイシュの増幅や、降雨後の水位が上昇する様子など、観測期間中に生じた水位変化を捉えることができた。今後、大気・湖水・固体地球の相互作用を定量的に評価するためのデータを蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
各センサーによるデータ取得と逐次データ解析を進める。弟子屈で生じている重力変化は概ね陸水変化で説明できるが、陸水重力変化モデルと合わない短期的重力変化も生じている。マイクロガルオーダーの微小な変化を検討する場合、生データに立ち戻って有感地震時の非線形応答など見かけの重力変化も同定する必要がある。地震以外にも、気圧・降雨・積雪変化に対する応答を詳しく調べ、短期的重力変化の原因を探る。他の地域の重力変化と比較できるように、スペクトル画像データベースの構築を進める。再度、絶対重力測定による超伝導重力計のドリフト検定を実施し、弟子屈の経年的重力変化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者の一人が年度後半に長期に出張し年度内に現地出張を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。その他は各分担者で生じた端数である。次年度、各分担者が現地出張旅費や観測消耗品類の購入費として使用する計画である。
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