研究課題/領域番号 |
20K04095
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
杉本 志織 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (90632076)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 夏季天候 / 東アジア / 大気領域モデル |
研究実績の概要 |
20km分解能実験における6月降水のモデルバイアス精査に関する論文を執筆し、国際誌Climate Dynamicsに投稿した(解析は2021年度に実施し、その内容はすでに報告済であるためそちらを参照願いたい)。査読プロセスを経て、11月にオンラインで掲載された。また、日本気象学会秋季大会にて本成果を口頭発表した。なお、この数値実験結果は国際プロジェクト(LS4P/TPEMIP)に提出しているが、国外研究者らによって活用されており、現在、共著として論文執筆中である。 所属機関が所有するスーパーコンピュータの入れ替えに伴い、本研究で使用していた大気領域モデル(Weather Research and Forecasting Model)を新たなスーパーコンピュータに移植した。スーパーコンピュータ側の不具合もあり、正常にモデルが稼働するまでに半年程度の時間を要した。一方、この移植により計算時間が大幅に短縮できることが分かった。そこで、2021年度末時点では、20㎞分解能実験の領域にチベット高原上のみ水平分解能4㎞とした領域を埋め込んだ「20㎞-4㎞実験」の対象年を2010年に限定していたが、追加で2013年、1998年、2003年の夏季を対象に20km-4km実験を実施した。2013年は2010年同様猛暑年であり、1998年は長江流域や日本各地で大雨・洪水が発生した年である。2003年はチベット高原の地表面温度と長江流域の降水量に関係性が強い年とされており、既出の国際プロジェクト(LS4P/TPEMIP)のターゲット年である。日本でも梅雨前線の停滞に伴う豪雨が7月に発生している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績でも述べた通り、25年分の20km実験結果に関する論文を投稿し、年度内に受理された。また、関連学会にて成果発表を実施した。当初予定では、20km実験結果は比較対象としての価値しか認めていなかったが、論文として報告できた上に、実験プロダクトとして国際プロジェクトに提出することで、国外研究者による新たな研究成果の創出につながった。 気象モデルの移植作業が必要となったため、20km-4㎞実験の結果を十分に解析する時間が取れなくなってしまったものの、計算に要する時間が短縮できるようになったため、対象年を追加した。2022年度末に期間延長申請を行い承認を得ることが出来たため、2023年度中に20km-4㎞実験の結果を解析し、最終的な成果として報告する予定である。 以上、外的要因もあったことからすべてが計画通りとは言えないかもしれないが、派生的成果を含め、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き、20km実験と20km-4㎞実験の両方を用い、日本周辺領域の広域循環場を比較することで、チベット高原上での対流活動が遠隔的に日本の天候を左右する要因について分析する。また、LS4P/TPEMIPや他の国内外研究プログラムと情報交換を継続する。LS4Pはフェーズ2に移行することが決定しており、新たなプロダクト作成が始まる可能性が高い。本研究の成果を活かして新たな実験設定を提案する共に、20km-4㎞実験の結果についても関連会合で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の蔓延に伴い、国内外出張が大きく制限されたため旅費等に未使用額が発生した。期間延長申請を行い承認されたため、2023年度の成果発表出張等に使用する予定である。
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