本研究では,実体波のレシーバ関数や,基本モードおよび高次モードの表面波位相速度等の観測情報を用いて,ベイズ推定に基づく非線形インバージョンを通じ,上部マントル内の各種不連続面を推定する手法の確立を目指している.本年度は,代表者の研究グループで開発・改良を進めてきたレシーバ関数(RF)解析とマルチモード表面波の分散曲線を同時に用いたインバージョン手法を,豪州大陸の定常観測点の波形記録への応用を通じ,手法の有効性の確認を進めた.大陸周辺域に多くの震源が集中する豪州大陸では,良質な広帯域地震波形が多数得られやすく,入射方向に応じたRFによる不連続面推定の実践的検証に適している.特に,入射方向や周波数依存するRF情報とマルチモード表面波を用いた同時インバージョンを通じて,豪州大陸下の主要定常観測点周辺下の不連続面推定を行い,各地の地域性を反映したリソスフェア-アセノスフェア境界等の空間分布が得られた.これらの成果は,国際誌への投稿準備中である.この手法は今後,本研究の後継プロジェクト等を通じ,世界の大陸プレート底面マッピング等の更なる応用研究での活用が期待される.また,以前より継続してきたマルチモード表面波に基づくユーラシア大陸の新しい3次元S波速度モデルの構築作業も進めた.今後の大陸マントル内の不連続面研究でも活用され得る.なお,本計画最終年度となる今年度は,これまでに得られた成果をまとめ,豪州にて行われた国際ワークショップでの招待講演を行い,本研究成果の更なる発展に向けて関連研究者たちとの意見交換も行った.
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