研究課題/領域番号 |
20K04097
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江本 賢太郎 東北大学, 理学研究科, 助教 (80707597)
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研究分担者 |
中原 恒 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20302078)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DAS / 光ファイバー / 高密度地震観測 / 短波長不均質構造 |
研究実績の概要 |
光ファイバーケーブルを用いたDAS(Distributed Acoustic Sensing)により,微細な不均質構造を明らかにするために解析を進めた.計測機材のスケジュールの都合により,DAS観測実施が年度末の3月後半になったため,本年度も引き続き,別予算で行なった既存のDAS記録を用いた解析と理論・数値シミュレーションを中心とした研究をおこなった.既存のDAS記録は国道4号沿いに国土交通省が敷設した光ファイバーケーブルを用いたものであり,全長50km,測定間隔5m,合計約10,000チャンネルという超高密度データである.交通ノイズの少ない深夜に発生した6個の地震時の記録を用いて,その振幅分布から地盤増幅特性を推定した.2-4Hzの帯域で推定した増幅率と,防災科学技術研究所が公開している250m分解能の増幅率の間には高い相関が見られた.DASでの推定は5m間隔という高密度で行え,細かい変動パターンが見られるが,これがケーブルと地面のカップリングの影響なのか,真に微細な地盤増幅率の空間分布を反映しているのかはさらなる精査が必要である. また,DAS観測で得られるのは歪速度という従来の地震計で得られる速度とは異なる次元の物理量である.そのため,微細不均質による影響の受け方も異なり,空間微分量である歪速度の方が,微細不均質に敏感であると考えられる.そのため,微細不均質による地震波伝播への影響を評価するマルコフ近似理論を,歪速度に対応したモデルへと拡張を行なった.これにより,DAS記録における微細不均質の寄与を定量的に明らかにすることが可能になるとともに,従来の手法を単純に拡張するだけでは歪速度に対応できないことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度,別予算で蔵王山においてDAS観測を行なった.その際に使用した機材では,従来の機材より広い周波数で振動記録が計測できることが確認された.そのため,本科研費で行う予定であった国道4号でも同じ機材を使うことが効果的であると判断した.この機材のスケジュールの都合で,DAS計測開始が3月下旬となり,現時点ではまだその解析ができていない.観測は順調に進んでおり,来年度にデータ解析を行う予定である. 前述の通り,これまで別予算で行なった既存のDAS観測記録の解析を進めてきており,今回のデータが整理でき次第,解析に取り掛かれるよう環境を整えている.また,歪を扱う理論モデルの発展は期間を通して進めている.そのため,DAS観測,データ解析,理論モデルの発展の順序が当初の予定とは異なっているが,最終年度である来年度には予定していたことは実施できる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度末から4年度初めにかけて実施している宮城県内の国道4号,国道47号におけるDAS観測のデータ解析を開始する.まずは既存データとの比較を行い,その後,これまで進めてきた既存データに対する解析手法を新データにも適用,または適宜発展させて適用し,光ファイバーケーブルに沿った地中の微細不均質構造を推定する.既存の通信用光ファイバーケーブルを使用しているため,ケーブルと地面のカップリングの影響を評価することが重要であるため,解析にはこの点を考慮して慎重に行う必要がある. また,従来の速度・変位から歪速度・歪への理論モデルの発展を継続して行い,データ解析にはこの理論モデル構築で得られた知見も活かして行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
上述の通り,DAS観測機材のスケジュールの都合で,本年度行う予定であったDAS観測が年度末にずれ込み,支払いが来年度となったため.
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