光ファイバーケーブルを用いたDistributed Acoustic Sensing(DAS)観測により、光ファイバーケーブルに沿って数m間隔で数十kmの距離を一度に観測する超高密度観測が可能となった。これにより、従来の地震学と比べて一桁以上高密度なデータが得られるため、分解できる解像度も飛躍的に向上した。本課題では特に断層付近において詳細な地震波データを解析することで、微細な不均質の影響を調査することを目的としている。本課題では、宮城県の国道4号・47号に国土交通省が敷設いた光ファイバーケーブルを用いてDAS観測を行った。このデータに加え、熊本県の国道3号沿いでのDAS観測データも用いた。国道3号は、一部区間が日奈久断層に沿っている。それぞれの観測の期間は約一か月であり、期間中に発生したいくつかの自然地震の記録が超高密度で捉えることができたが、強い人工ノイズにより、自然地震の解析は困難であった。そのため、人間活動が発生する雑微動を積極的に利用した解析を行った。その一つとして、橋梁が車両により振動し、そこから発生する地震波を利用た地下構造の推定を行なった。また、雑微動から計測ポイント間を伝わる波を抽出する地震波干渉法を用いた解析も行った。これらの解析から地下百数十メートルまでの浅部構造を数kmの断層スケールから、数十メートルの詳細構造まで推定することができた。日奈久断層沿いでは、断層近傍で地震波速度が高速度から低速度に移り変わる様子が見られた。また、波形のばらつきに着目した解析を行うことで、断層近傍では数メートルの亀裂スケールを含めた微細不均質の影響で地震波が強く散乱される様子が確認できた。これらのことから、DAS観測は断層近傍における浅部構造を詳細に推定するために有用な手法であることが示され、断層の不均質性の解明、地震時の揺れによる被害予測にもつながるものである。
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