研究課題/領域番号 |
20K04099
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石瀬 素子 東京大学, 地震研究所, 特任研究員 (60625739)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地震波異方性 / 時空間変化 / 微動活動 / ゆっくり地震 / 低周波地震のマイグレーション / 震源決定 |
研究実績の概要 |
本研究では,我々が開発した地震波異方性の連続測定法(Ishise and Nishida, 2015)を活用し,地震波異方性の連続変化を通してみられる火山流体の振舞いによる応力場や構造の変化の推移を明らかにすることを目的のひとつとしている.また,多種多様な火山観測データの徹底的な分析を行い,明らかになった地震波異方性の変化と火山現象を紐づけることも計画している.これらを遂行することで,地震波異方性モニタリングによる火山活動の現状認識への貢献を図るための礎を築き,最終的には,観測波形即時解析による異方性リアルタイムモニタリングの火山監視体制への実装を目指している. この達成に向け,本研究では,①微動の震源決定方法の開発・実装,②既存の記録の異方性モニタリング,③異方性と火山活動の関連性の検討,の実施を計画している.今年度は,①微動の震源決定方法の開発・実装のうち,微動の震源決定方法の開発と,②既存の記録の異方性モニタリングに取り組んだ. ①の一部である震源決定方法の開発については,地震波異方性を計測するのに用いた波のpolarization解析を実施して波の到来方向と入射角を求め,これらを活用した微動発生場所の推定方法について,微動の震源がよく調べられている四国西部の活動を用いて方法の有効性を検証した.その結果,本手法で求められた波の到来方向と入射角から推定される微動源と既知の微動活動の震源がよく一致しており,微動活動の移動の追跡も可能である事が確認できた.②の異方性のモニタリングにからは,微動活動の推移(ゆっくり地震の進展)に伴い,異方性の強さや異方性の方向が時間変化していることが示された.震源位置を考慮することで,観測された異方性の成因や変化の原因解明に繋がると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次年度使用額の大半は,2020年度に購入を予定していた計算機,およびその使用に付随するハードディスク等の消耗品購入を遅らせたことで生じた.加えて,学会参加のための旅費を使用しなかったことも関係している. 助成金の使用計画については,計算機と消耗品については,当初の計画どおりに使用する見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の取り組みにより,構想中の震源決定方法が微動の震源決定に有効であることが確かめられた.ただし,本研究の対象は火山噴火準備過程に伴う微動活動であるのに対し,今年度対象にしたのはゆっくり地震に伴う微動活動である.したがって,今後は,本研究の本来の目的である火山地域における微動活動を対象にした震源決定を実施する.次年度は,観測体制が充実しており,かつ多くの微動活動が報告されている富士山を対象とした解析を最初に実施し,富士山周辺の微動活動の震源決定を試みる.富士山を対象とした解析で本手法が火山地域にも適用可能であることを確認した後,伊豆大島,三宅島についても同様の解析を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の大半は,2020年度に購入を予定していた計算機,およびその使用に付随するハードディスク等の消耗品購入を遅らせたことで生じた.加えて,学会旅費を使用しなかったことも関係している. 助成金の使用計画については,計算機と消耗品については,当初の計画どおりに使用する見込みである.
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