研究課題/領域番号 |
20K04100
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 俊哉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40272463)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火山性流体 / 自動採取 / 温泉水 / 土壌ガス / 噴気ガス |
研究実績の概要 |
火山性流体中の微量成分や溶存成分の量比は、火山地下の状況の変化を捉えうる感度の高い指標であるが、これまでの多くの研究では試料を現地でサンプリングし、持ち帰り分析することでデータを得ていたため、データ頻度が低く、火山活動を定量的に議論できる状況に至っていなかった。本研究課題では、この点に着目し、火山性流体の高頻度自動採取装置を開発し、その有効性を実証することが目的である。開発を目指している自動採取装置は、小型のCNC(computer numerical control)機器を応用するものである。 本年度は、昨年度に高度化した温泉水をターゲットとしたサンプリング装置を用いて行っている北海道の温泉施設での長期テストを種々のトラブルを解決しつつ継続することで、長期間にわたって高頻度サンプリングが可能なことを示すことができた。また、ガス試料のサンプリングに向けた、試料導入部の開発を行った。サンプリング装置自体は、これまでと同様にXYプロッターをベースにした。ガス試料の導入には、ブチルゴムのセプタムのついたバイアル容器に、注射針を二本溶接したものをリニアアクチュエータに取付けて差込み、一方の針からポンプでガス試料を注入し、もう一方の針から排気を行う方式を採用した。この方式による試料導入を実験室でテストを重ねた。注射針の目詰まりなどの問題点を解決したうえで、年度末には、箱根火山において土壌ガスのテストサンプリングを実施した。日中の時間帯に2日に分けてサンプリング間隔6分の高頻度で、常温レベルと水蒸気を多く含む土壌ガスのサンプリングを行い、80本程度の試料の高頻度サンプリングができることを確認した。サンプリングしたガスサンプルに関しては、土壌ガスの二酸化炭素の炭素同位体比を2022年度に分析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度にあたる2020年度には温泉水などの水試料の採取装置、2021年度には土壌ガスなどのガス試料採取装置の開発ができており、装置開発に関しては、順調な進捗である。一方、観測を実際に行うフィールドでの調査やテストに関しては、2020年度からのコロナ禍による制約で計画が予定どおり進んでいない面がある。特に、台湾でのサンプリングの実証に関しては、台湾の入国規制で実現の目途が立っていない。以上の点から、全体の進捗状況はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、2022年度は噴気ガスの採取手法の開発を実施していく。試料の導入部に関しては、同じガス試料なので2021年度に開発したガス試料導入方法を改良して使用するが、噴気ガスの場合、水蒸気を凝縮させ、残ったガス相のサンプリングを行うことになる。水蒸気を凝縮させる部分に関して、検討やテストが必要となる。現時点では伊豆大島の蒸気井を中心にテストを繰り返し、開発するとともに、装置全体の実用性を検証していく予定である。また、コロナ禍の影響もあり、現状では計画していた台湾での実証や運用に関しては難しいと考えられる。この辺りを考え、国内外で代替運用場所を早期に検討し、可能であれば実施したいと考えている。国外の候補としては、研究代表者が調査の経験を有する、2021年に噴火があったカナリア諸島が挙げられる。最終的には、本研究課題の目的を達成するため、今後のコロナ禍の状況を考慮しつつ、本研究課題の延長を含めて検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題を開始した2020年度初頭から、コロナ禍による制約で予定していたフィールドでの調査やテストを十分に実施することができず、それにかかわる旅費や装置の製作用消耗品費などが次年度使用額となった。コロナ禍の状況を見ながら、研究計画として遅れている部分に着手しつつ、使用していく予定である。特に、計画していた台湾での装置の運用が難しいと考えられるので、国内外で代替運用場所を早期に検討して、実現可能であれば、本研究課題の目的の達成に向けて計画を変更して実施する方向で考えている。
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