本研究課題では、火山性流体の高頻度自動採取装置を開発・運用し、その有効性を実証することが主たる目的である。火山性流体試料には、温泉水などの水試料や土壌ガス、噴気ガス、蒸気井噴気ガスなどの気体試料があるが、本研究課題では両者に対応した自動採取装置の開発を行ってきた。 最終年度にあたる2022年度は、気体試料の自動採取を蒸気井噴気に対応させるため、水蒸気と他の気相を分離する部位を開発し、伊豆大島の蒸気井で自動採取の長期運用と実証を6月から7月にかけて行った。伊豆大島では、3月から自動採取の本格的な運用を開始し、継続中である。 2022年度の研究計画に記したようにスペインのカナリア諸島の研究グループとの共同観測を実施した。10月と2月に渡西し、テネリフェ島テイデ火山の山体に掘削した取水施設(2か所)の地下水と、2021年に大規模噴火したラパルマ島の高濃度二酸化炭素湧出地帯の屋内大気を、それぞれ開発した装置で自動採取を開始した。現在は、先方研究機関が装置のメンテナンスと試料分析を担当し共同研究を継続している。特にラパルマ島の地点は、大気中の高濃度の二酸化炭素により住民の避難生活が続いていて、大きな社会問題となっている。本研究の自動採取により湧出している二酸化炭素の起源やヘリウム濃度の上昇などの新たな知見が得られて来ている。 本研究課題では、水試料に関しては温泉施設や地下水取水施設、ガス試料としては、土壌ガス、蒸気井のほか、高濃度火山性二酸化炭素放出地帯の大気を、自動採取し、開発した装置の有効性を実証してきた。そして、いくつかの地点では現在も継続して運用している。また、終了後の2023年度からは、国内の研究機関と火山性流体を含む河川水の自動採取に関する共同研究の計画が進んでおり、本研究で開発した装置による研究の今後のさらなる発展が期待される。
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