研究実績の概要 |
地震発生など,地殻のダイナミクスを理解するためには,観測量である地震波速度や電気伝導度から流体分布を推定することが不可欠である。しかし,流体の形状に関する理解が不十分であるため,流体分布を定量的には制約できていない。上部・中部地殻には,様々なスケールのクラックが存在するが,それらは地殻内の圧力によりほぼ閉じているだろう。流体は,圧力下での「クラックの閉じ残り部分」に存在するはずである。本研究では,この「閉じ残り部分」の形状を理解するため,(1)クラック閉鎖に伴う物性変化に関する高圧実験,および(2)圧力下でのクラック閉鎖に関する数値実験を行っている。 (1)クラック閉鎖に伴う物性変化に関する高圧実験 クラック(cmスケール)のある庵治花崗岩の円柱試料(直径26mm,高さ30mm)に,クラックに沿った剪断変位を 0 mm, 0.5 mm, 1.0 mm と系統的に与える。それぞれの試料に対して封圧を増加させながら亀裂の電気抵抗を測定した。試料には0.1 mol/LのKCl水溶液を含ませている。常圧において,剪断変位を与えた試料は変位のない試料に比べて約1/2の電気抵抗を示した。電気抵抗は封圧とともに増加し,その増加率は剪断変位が小さいほど大きかった。封圧40MPaでの電気抵抗は。剪断変位が0.5, 1.0 mmと増加するに伴い,2賠,4倍となった。剪断変位が大きいほど,高圧で閉じ残り,かつ連結している空隙が多いことが分かる。 (2)圧力下でのクラック閉鎖に関する数値実験 常圧でのX線CT画像から亀裂入り試料のモデルを構築し,圧力増加に伴う亀裂閉鎖の数値実験を行っている。降伏応力によりアスペリティの変形をチューニングしている。求められた開口分布に対して,差分法により電気抵抗を計算することも可能となった。高圧実験と数値実験をあわせて,高圧での空隙形状を明らかにしていくことができる。
|