研究課題/領域番号 |
20K04103
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
海野 進 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (30192511)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プレート拡大 / 海洋地殻構造 / 海嶺軸セグメント / オマーンオフィオライト / シート状岩脈群 / マグマ組成 |
研究実績の概要 |
地震波構造探査と深海掘削データ,および数値モデルに基づく解析によれば,中・高速拡大海嶺におけるプレート拡大様式,すなわち地殻がどのように形成・変形していくかは,マグマ量/歪み量の比(M)と地殻の密度構造によって規制される。マグマ供給率が低いほど,岩脈群は厚く,噴出岩・下部地殻は薄くなると予想される。そこで,本研究では初生的な海洋地殻構造が世界で最もよく保存されているオマーンオフィオライトについて地質調査を行い,海洋地殻構造(噴出岩層,岩脈群,ハンレイ岩層の厚さ,シート溶岩/枕状溶岩比)を復元し,噴出岩・岩脈・ハンレイ岩の全岩・鉱物組成から部分溶融度及びマグマ温度・分化程度を推定して,地震波速度構造と深海掘削データから予想される“地殻構造とマグマ供給率の関係”が成立するかを検証する。 オマーン山脈北部ソハール地域に分布するオフィオライトの古拡大軸セグメントのうち,Wadi Bargha~Wadi Sadamの間の古拡大軸セグメント南半部について,地質構造データを元に上部地殻の構造と採取済みの岩脈群の試料の全岩化学組成分析を行った。古拡大軸セグメントの中心から1.8 kmでは噴出岩層/シート状岩脈群層厚の比Re/i = 370/2166 = 0.17であるが,中心から3.6-10 kmの地点ではRe/i = 587/3080~535/2888 = 0.19となる。北部で全岩Mg# = 56-36, TiO2 = 0.7-2.9 mass%と組成幅が大きいが,南部のセグメント端ではMg# = 58-44, TiO2 =1.0-1.4 mass%と未分化な組成に限られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍による渡航禁止のため2020年度の現地調査は実施できなかった。しかし当初計画にあるとおり,本研究以前に実施した地質データと岩石試料があるオマーン山脈北部ソハール地域に分布するオフィオライトの古拡大軸セグメントのうち,Wadi Bargha~Wadi Sadamの間の古拡大軸セグメント南半部について,既存のデータ解析と岩石試料の分析を行うことで,当初の目的は概ね達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度末までにWadi Sadam~Wadi Hawasinaに分布する古拡大軸セグメントの現地調査を実施する。既存の公表されている地質図と衛星画像に基づいて噴出岩/シート状岩脈群/層状ガブロ/モホ面の地質境界をトレースし,地殻構造を推定する。さらに現地調査によって各地層の分布推定の精度を検証し,適宜修正を行う。これらを総合して地質構造を明らかにする。また,シート状岩脈群を中心に岩石試料を採取し,全岩化学組成を分析する。これらのデータに基づいて,古拡大軸セグメント内の地質構造とマグマ組成の変化を明らかにする。 コロナ禍の影響で現地調査が困難と判断される場合でも,既存の公表されている地質図と衛星画像による地殻構造の推定は可能である。また,宮下純夫新潟大学名誉教授より提供していただいたWadi Sadam以北の下部地殻の地質岩相分布・構造データ,岩石・鉱物分析データ,顕微鏡用薄片について解析し,本研究で得られたデータと合わせて,海洋地殻全体のセグメント構造について明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による渡航禁止のため2020年度の現地調査は実施できなかった。使用しなかった旅費の一部は分析補助者の雇用等に充てたが,54万円の繰り越しが生じた。これは2020年度にできなかった分も含めて2021年度の調査旅費に充当する。
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