オマーン山脈北部ソハール地域に分布するWadi Fizh~Wadi Sadamの間の古拡大軸セグメント全体について,地質構造調査及びシート状岩脈群の全岩化学組成分析を行い,地球化学的特徴に基づいてマグマを分類し,MELTSによるモデル計算により,各マグマタイプの生成条件を明らかにした。 シート状岩脈群はコンドライトで規格化したパターンの特徴から3つに分類できる;タイプ1)わずかに中希土が上がる鯨背型;タイプ2)重~中希土にかけて平滑で軽希土がやや枯渇するもの;タイプ3)軽希土へ向けて大きく枯渇するもの。タイプ1は最も少なく,タイプ2が最も多い。拡大軸期の噴出岩V1では,タイプ2は最も普遍的で全ての層準に出現し,タイプ1,3は中部噴出岩層MV1にのみ出現する。その他,岩脈にはなく,上部噴出岩層UV1にのみ見られるタイプ4(タイプ2よりも高い軽希土/中希土比を示す)がある。これらの希土類元素パターンの違いは,La/Gd(N)―La/Lu(N)比の図上で識別される。最も多いタイプ2は東太平洋海膨の中央海嶺玄武岩とよく似た微量元素組成をしている。これらのマグマの生成条件を明らかにするために,中央海嶺玄武岩の枯渇したソースマントルDMMについてαMELTSによる部分溶融モデル計算を行った。タイプ3は3.0 GPaから1.1 GPaまでDMMが断熱上昇した際のバッチ融解で再現できる。タイプ2は3.0 GPaから1.2 GPaまでDMMが断熱上昇したバッチ融解メルトと,2.5 GPaまで断熱上昇したバッチ融解メルトの混合によって再現できる。一方,タイプ1はタイプ2,タイプ3に大洋島玄武岩的なリサイクルスラブ成分が加わることで説明できることがわかった。
|