研究課題
火山山頂部および火山島は噴火予測や火山活動そのものの理解において重要な観測域であるにも関わらず、アクセスの困難さおよび安全面から「観測の空白域」 であることが多い。特に、ケーブルを展張しての設置が必要となる地球電場は観測が困難となっている。このため、本研究はUAV(ドローン)を用いて電極等の地表設置を行うことにより電場観測を実現し、これらの難観測域における電気比抵抗構造の解明を可能にすることを目的とする。具体的には、UAV本体に取り付けた電極とUAVに吊したケーブルの先に取り付けた電極を距離を開けて着陸させ、電極間の電位差を測定する。これによって得た電場データと近傍で測定した磁場データから、Magnetotelluric法を用いて比抵抗構造を得る構想である。2022年度は、UAVを用いた具体的な電極の設置方法および実際の電場の測定方法を検討したのち、小型のUAVを用いてた飛行試験および(UAVを用いない)電場の観測試験を実施した。UAVの飛行試験は、COVID-19感染症による行動規制により限定的となり、御嶽山麓の敷地において実施した。この試験により、電極の投下・設置方法、着陸の際の制御方法などの検証を行った。電場の測定試験では、実際の観測を模した電極の設置方法(非埋設によるPb-PbCl電極測定・ステンレス棒による測定)により、ロガーを用いた高サンプリングレート(1024 Hz)での電場測定の試験を行い、帯域によっては問題なくデータが取得できることを確かめた。また、埋設しないで電場を観測するための設置素材の検討をおこなった。一方で、研究開始当初購入を予定していたUAVが販売停止となり、また、セキュリティ問題により購入可能なUAVに制限が生じていることから、実際の観測で用いる大型UAVの運用体制を見直し、業者からのレンタルによる観測を実施する方針で検討を進めた。
3: やや遅れている
2020年度に生じた購入を想定していたUAVの販売停止、およびセキュリティ問題による購入可能なUAVの制限、物価上昇によって、実際の観測に用いることが可能な大型UAVの予算内での購入が困難な状況となっている。このため、UAVの購入を断念し、UAVを業者より借用し計画を進めるすることを検討中である。また、COVID-19感染症の影響により、2020年度、2021年度に引き続き観測に制限が生じており、2022年度は御嶽山の麓において限定的な試験を実施したにとどまった。このため本研究課題は2023年度まで延長することとなり、想定よりもやや遅れている状況にある。
2022年度は引き続き実際のフィールドに環境の近い御嶽山山麓部にて観測試験を実施する。具体的には、UAVへの観測装置を付けての観測、電場測定装置の展開方法の検討、配置した電極の配置(電極間距離および方向)の計測を他のUAVを用いて測定する方法を確立する。これにより、本研究の目的である遠隔地での電場観測に必要な技術要素の全てを確立することを目指す。なお、レンタルによるUAVを火山地域に持ち込むことは保険等の兼ね合いから困難であることから、実際の難観測地域での電場観測は実施しない可能性が高い。
上に述べた計画の遅延により課題終了年を1年延長したため、予算も大部分を2023年に繰り越すこととした。2023年度は、UAVのレンタル経費(保険料含む)、電極の購入代、観測のための旅費、および研究成果の発表に予算を使用する計画である。
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Exploration Geophysics
巻: 54 ページ: 205-216
10.1080/ 08123985.2022.2089013