マントル鉱物の格子熱伝導率は,地球ダイナミクス等の解明に必要となる物理量である。しかし,下部マントル温度・圧力条件下の実験は依然として容易ではない。また,理論研究においても,鉄固溶体などの現実的な化学組成を対象とした計算報告例は極めて少ない。本研究では,沈み込みスラブを構成する鉱物の端成分組成の深部マントルその場条件における格子熱伝導率,ならびに,高温高圧下における鉄固溶効果等について,先駆的な研究成果が得られた。今後,これらの物質科学的な知見を取り入れた熱的進化モデリングの構築を通じて,地球内部の温度構造の進化(熱史)についての理解が促進されるだろう。
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