海洋プレートを構成する海洋地殻の物質科学的構造の詳細な再検討により、異なる海洋プレート形成場における最上部マントル物質の相違を把握・検証し、上部マントルの物質構造を時間軸を絡めた4次元で制約することが本研究の目的である。中央海嶺と背弧海盆という異なる海洋プレート形成場で採取された最上部マントルと目される「かんらん岩」の構造発達史、形成年代およびメルト抽出年代、地球化学的性質(溶融条件)を把握し、これらの相違あるいは類似点を結晶構造的・物質化学的に明らかにする。その上で、それぞれの海洋プレート形成場と最上部「かんらん岩」組成のマススケールでのモデル化から先行研究と比較・検討を行い、実際の上部マントル「かんらん岩」からの海洋プレート形成論とその進化モデルの提案を行う。具体的には、1. 精密Os(オスミウム)同位体比分析と白金族元素(PGEs)組成分析を行い、「かんらん岩」のメルト抽出年代とそれらの溶融条件・機構の推定、2.「かんらん岩」の緻密な組織観察によるその構造発達史と由来の推定、3.「かんらん岩」の残存鉱物の元素・同位体組成分析によって溶融条件や年代を詳細かつ正確に制約する、の3点である。 研究初年度の2020年度は、主に北部マリアナトラフから得られた「かんらん岩」の緻密な組織観察が行われ、その結果、高温から低温での変形微細構造や複数回のかんらん岩への岩脈の貫入があったことが判明した。研究2年目である2021年度は1や3の分析を進めつつ、フィリピン海プレート上の他の「かんらん岩」の試料採取についての議論を行った。2022年度にかけて、鉱物の微量元素分析による交代作用の見積りとOs同位体比分析と白金族元素存在度のデータから、「かんらん岩」の組成の多様性と下部地殻を構成するはんれい岩との比較等を行い、その結果を論文として報告するためにまとめている。
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