研究課題/領域番号 |
20K04114
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
熊谷 一郎 明星大学, 理工学部, 教授 (50597680)
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研究分担者 |
田坂 裕司 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00419946)
益子 岳史 静岡大学, 工学部, 准教授 (70415917)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 液体金属 / 熱対流 / 超音波流速分布計 / 感温液晶 / 相変化 / レオロジー測定 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、液体金属プルームの温度場と速度場の同時可視化を目的とし、これまでに、液体金属中のサーマルおよびジェットなどの既知の流れに関する流体実験を行い、薄型の矩形水槽の壁面に設置した感温液晶板による温度場の2次元可視化および超音波流速分布計(UVP)による速度場計測を行ってきた。 今年度は特に、液体ガリウムよりも融点が低く、室温での実験において扱いやすいガリンスタンを用いた流体実験を試みた。ガリンスタン内部の速度分布計測は、技術的に困難さを伴うことが知られているが、液体金属との濡れ性や速度計測のためのトレーサーとの相性について改善したことにより、従来よりも質の高い速度分布計測が可能となった。 また次年度の予備実験として二重円筒水槽を作成し、水および非ニュートン流体を用いたレイリー・ベナール対流実験を行った。現在、円筒水槽への感温液晶の印刷および周方向(360度)の温度場・速度場の同時可視化法について検討を行っている。さらに相変化を伴う流体(感温膨潤ゲル(PNiPAM)のサスペンジョン)とHele-Shawセルを用いたレイリー・ベナール対流実験では、過渡現象における2層分離状態の進化や定常状態における対流セルの振動現象の特徴について明らかにした。作動流体であるゲル・サスペンジョンのレオロジー特性は、ゲル粒子の膨潤度(粒径)などに依存するが、コーンプレート型などの既存のレオメーターでは粒子サイズの影響によって計測が困難であるため、今年度導入したBall Measuring Systemを用いたレオロジー測定を行い、膨潤ゲル粒子を含む非ニュートン流体の粘度や降伏応力に関するゲル粒子サイズ依存性などについて調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の研究実施計画では、初年度は本実験を実施するための準備期間となっている。液体金属プルームの可視化実験を実施している北海道大学の研究グループでは、室温付近での実験に適したガリンスタンを用い、液体金属中の速度場計測技術の開発を進めてきた。これまで、ガリンスタンと超音波トランスデューサーとの接触面における濡れ性の影響で、精度の良い速度分布計測が難しい状況にあったが、北大グループの工夫によって大幅に改善された。このことにより、本実験でのプルームの速度場計測の準備が整った。一方、静岡大グループによって実施されている相変化を伴う流体のレイリー・ベナール対流実験についても、レイリー数やゲルの膨潤率、相転点の制御によって、様々な対流構造の特徴が明らかになってきた。また、明星大学では、次年度に実施する二重円筒水槽を用いた熱対流現象に関する予備実験を始めるとともに、静岡大グループで使用している膨潤ゲルのサスペンジョンに似た非ニュートン流体中を自由落下する物体に関する実験を行い、その成果を研究協力者であるパリ南大学のDavaille博士らとともにJournal of Non-Newtonian Fluid Mechanicsなどに公表した。さらに、各グループで使用する流体のレオロジー特性を明らかにするための装置(Ball Measuring System)を導入し、計測を開始した。以上、新型コロナ禍の影響で、当初予定していた出張を伴う実験や研究打ち合わせについては制限を余儀なくされたが、それぞれの研究機関において、本実験のための準備が着実になされた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、次年度も、研究計画に沿って各グループの実験を着実に進めていく。液体金属(ガリンスタン)中の速度場計測に関しては、本年度、計測時の濡れ性の改善などによって、より良いデータを得ることが可能となったことを示したので、今年度は、感温液晶の壁面印刷(薄型矩形水槽および二重円筒水槽)による温度場の可視化実験に注力する。その上で、液体金属プルームの温度場と速度場の同時可視化を試みる。一方、相変化を伴う流体(ゲル粒子のサスペンジョン)を用いた熱対流実験については、Ball Measuring Systemを用いた流体のレオロジー測定を行い、相転移による粘度変化の影響などを調べる。その上で、過渡期における対流の二層分離状態の進化過程や定常状態における熱物質輸送の物理を明らかにしていく予定である。 今後の新型コロナの感染状況にもよるが、可能であれば、出張を伴う実験および研究協力者を交えた中間報告セミナーを実施する予定となっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染拡大により、研究計画書で予定していた出張(実験および研究打ち合わせ)ができなくなった。今後(翌年度)のコロナ感染状況にもよるが、感染拡大が治まり、出張が可能となった場合に、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用するとともに、研究課題達成のために、より広い温度範囲での計測を可能とする感温液晶を複数購入する計画となっている。
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