坑井温度プロファイルによる日本周辺の地表面温度履歴の解明

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K04117
• 研究機関: 国立研究開発法人産業技術総合研究所
• 研究代表者: 田中 明子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (40357455)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 地表面温度披瀝 / 坑井温度プロファイル / 地殻熱流量 / 熱伝導率 / 温度勾配

研究実績の概要

本研究課題は，
・坑井気候学による日本の地表面の温度変動披瀝復元
・坑井温度プロファイル・地殻熱流量・熱伝導率などのデータベースのアップデートとその公開
を同時並行的に実施することにより，日本周辺域における地表面の温度変動を定量的に高精度で評価することを目指す．それにより，グローバルな地表面の温度変動披瀝復元や気候予測モデルの高度化に資することを図るものである．
今年度は，IHFC (国際熱流量委員会 [http://ihfc-iugg.org/]. IUGG (国際測地学及び地球物理学連合) の下に設置されている IASPEI (国際地震学及び地球内部物理学連合) の委員会) の「地殻熱流量データベース」部会に参加した．オンライン会議などの議論を通じて，観測・測定値の誤差情報など従来のデータベースでは欠けていた項目などを洗い出し，項目毎のフォーマットなどを決めることにより，データベース構造を再構築し，地殻熱流量の新しいデータベース構造を決定した．その成果の一部は論文として公表 (Fuchs et al., 2021) した．また，その新構造に則った FAIR 原則に沿ったオープンデータの適切な公開の準備を進めた．
一方，坑井気候学に関しては，地表面温度変動披瀝のインバージョン解析を行うための坑井温度プロファイルを準備した．この解析に必要な熱伝導率については，測定を進めている．また文献調査を通じて，熱伝導率のデータの拡充を実施した．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

特に地殻熱流量のデータベースや熱伝導率を含む熱物性値に関して精力的に議論される予定であった，国際会議 (7th International Meeting on Heat Flow and the Geothermal Field) が新型コロナウイルスの世界的感染拡大の状況等から延期となったが，オンライン会議などを活用し，おおむね順調に進展していると考えている．

今後の研究の推進方策

地殻熱流量・熱伝導率などのデータベースに関しては，IHFC の活動を通じるだけではなく，文献調査なども実施することにより，引き続きアップデートに努める．一方，坑井気候学に関しては，温度変動披瀝のインバージョン解析を始める．予備的な解析結果を十分吟味した上で，解析手法の妥当性を確認し，データ解析を進めることにより，日本周辺の地表面の温度変動を定量的に評価する．

次年度使用額が生じた理由

当初参加を予定していた国際会議が新型コロナウイルスの世界的感染拡大の状況等から延期となったため今年度には開催されなかった．開催された場合の参加費用として，使用を予定している．

研究成果

• [雑誌論文] A new database structure for the IHFC Global Heat Flow Database (2021)
  • 著者名/発表者名: Sven Fuchs, Graeme Beardsmore, Paolo Chiozzi, Orlando Miguel Espinoza-Ojeda, Gianluca Gola, Will Gosnold, Robert Harris, Sam Jennings, Shaowen Liu, Raquel Negrete-Aranda, Florian Neumann, Ben Norden, Jeffrey Poort, Dusan Rajver, Labani Ray, Maria Richards, Jared Smith, Akiko Tanaka, Massimo Verdoya
  • 雑誌名: International Journal of Terrestrial Heat Flow and Applied Geothermics 巻: 4 ページ: 1-14
  • DOI: 10.31214/ijthfa.v4i1.62
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] Thermal data collection in and around Japan and its implications for lithospheric rheology and deformation (2020)
  • 著者名/発表者名: Akiko Tanaka
  • 学会等名: EGU General Assembly 2020
  • 国際学会
• [学会発表] Re-evaluation of thermal data in the Japanese Islands for better estimation of the temperature structur e in the crust (2020)
  • 著者名/発表者名: 山野 誠、田中 明子、濱元 栄起、後藤 秀作、松本 拓己
  • 学会等名: JpGU - AGU Joint Meeting 2020