研究課題/領域番号 |
20K04118
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研究機関 | 神奈川県温泉地学研究所 |
研究代表者 |
本多 亮 神奈川県温泉地学研究所, 研究課, 主任研究員 (80416081)
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研究分担者 |
酒井 慎一 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (00251455)
長 郁夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (10328560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 深部低周波地震 / 箱根火山 / 稠密地震観測 / マルチアレイ |
研究実績の概要 |
2021年度は前年度に構築した観測網をメンテナンスしつつ、それぞれのアレイ付近において微動観測を行い、予備的な解析を実施して速度構造モデルの初期モデルを推定した。仙石原は最もVsが遅く、南足柄は最も速いことがわかった。仙石原は3000年前の噴火で大涌谷から流れ出た岩屑雪崩の堆積物や潜在カルデラを埋めた堆積物などの存在を示唆していると考えられる。今後、詳細な解析を実施して各アレイごとの構造を推定し、震源決定の際に使用する予定である。 観測点の状況としては、箱根の仙石原を除くと基本的には山中に地震計を設置してあるため、獣(シカやイノシシ)による機材の破損が発生した。けもの道が近くを通っている観測点については繰り返し機材の破損が発生したため、木製の策で囲うなどの対策を講じた結果、2021年度後半はかなり被害を抑えることができた。 2021年9月に全点のデータを回収し、2022年3月までにwinフォーマットへのフォーマット変更が終了した。気象庁の深部低周波地震カタログに記載されているイベントについて、連続波形から該当時間の波形を切り出して確認したところ、マグニチュード0.5程度以上の深部低周波地震については、地震波形が観測されていることが確認できた。今後、観測された深部低周波地震についての解析を進める。 ただし、特に仙石原アレイにおいて想定よりもノイズが大きく、他のアレイに比べて地震波形が不明瞭である場合が多いため、観測点配置の変更も検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のために観測網の完成にやや時間がかかったこともあり、深部低周波地震の観測数がまだ十分でないこと、また業者に委託したフォーマット変更の業務が予想以上に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
観測網を構築した2020年11月から2021年9月までの観測データをwinフォーマットに変換できたので、今後は得られたデータを用いて解析を進めていく。まずは、気象庁カタログにある深部低周波地震だけでなく、温泉地学研究所でマッチドフィルター法を用いて独自に検出した深部低周波地震についても観測波形を切り出し、周波数特性や解析可能なマグニチュードなどを確認していく。さらに、ここまで波形を確認した範囲では、深部低周波地震のラベルが付いた地震であっても、一部遠地地震が混入していることが分かった。深部低周波地震として扱ってよい地震かどうかの確認も合わせて実施する予定である。 ただし、特に仙石原アレイにおいてノイズレベルが想定されたより高く、解析に必要な深部低周波地震の波形が十分得られない懸念があるため、観測点の分布を変更することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に乾電池を購入するための予算として計上したものであるが、別途使用可能な乾電池を優先して使用したため、経費に余りが生じた。一方で、波形のフォーマット変換に想定より費用がかかることが分かったため、次回のデータ変換および乾電池購入に使用する予定。
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