研究課題/領域番号 |
20K04119
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
森 康 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (20359475)
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研究分担者 |
重野 未来 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 受託研究員 (90749558)
桑谷 立 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), グループリーダー代理 (60646785)
西山 忠男 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 特任教授 (10156127)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛇紋岩メランジュ / 交代作用 / 沈み込み帯 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、沈み込み帯のプレート境界における岩石の混合、反応、変形、流体との相互作用の影響を明らかにすることを目的とし、低温高圧変成帯の蛇紋岩メランジュの形成過程を全岩化学組成データセットの機械学習により解析する。反応組織や変形構造との比較から本質的な過程を抽出し、蛇紋岩メランジュの形成モデルを提案する。 令和4年度は、神居古潭変成岩類(北海道)と長崎変成岩類(長崎県)において野外調査を行い、蛇紋岩メランジュの産状を比較した。両者とも剪断された基質中に構造岩塊を含む「ブロック・イン・マトリックス構造」で特徴付けられるが、岩相と変形の様相はかなり異なる。メランジュ基質の岩相は、神居古潭変成岩類では蛇紋岩および少量の滑石片岩であるが、長崎変成岩類ではアクチノ閃石片岩および少量の蛇紋岩と滑石片岩である。前者では、蛇紋岩が全体的に剪断され、変形の集中は滑石片岩に限られる。後者では剪断変形がアクチノ閃石片岩に極度に集中しており、その中に蛇紋岩と滑石片岩がレンズとして含まれる。これまでの研究結果として、アクチノ閃石片岩は蛇紋岩(基質)と苦鉄質変成岩(構造岩塊)の混成物であることが明らかになっている。以上の結果から、蛇紋岩メランジュの形成過程において交代作用が重要な役割を果たしていると考えられる。 現時点での仮説的なメランジュ形成モデルは次のとおりである:(1)蛇紋岩と苦鉄質・泥質変成岩が混合され、神居古潭変成岩類で見られるような「蛇紋岩メランジュ」となり、(2)流体の関与により蛇紋岩基質と構造岩塊の交代作用が生じ、(3)交代作用により岩石強度の低下により剪断変形の集中と岩石の混合が促進され、(4)最終的に長崎変成岩類で見られるような「交代岩メランジュ」となる。鍵となる(3)の岩石強度の低下は、機械的に弱い滑石が形成されることに加え、脱水と間隙水圧上昇も原因と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度から2年間は新型コロナウイルス感染症の影響により県外出張が制限されたため、野外における地質調査と資料採集ができず、予備調査での採集試料のみで研究を行ってきた。これにより計画全体に大幅な遅れが生じた。3年目になって制限が緩和されて野外調査を実施できたものの、本計画では全岩化学組成分析など時間を要する作業が多く、研究代表者自身の新型コロナウイルス感染および後遺症治療のため、遅れを取り戻すには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年間延長して目標の達成に務める。具体的には、採集試料の分析を8月末までに完了して論文としてまとめる。9月に神居古潭変成岩類の野外調査を補完し、その結果を踏まえて12月末までに論文を執筆し投稿する。現在執筆中の原稿も早期に投稿する。学会発表を1回以上行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度から2年間は新型コロナウイルス感染症の影響により県外出張が制限され、野外調査ができず、学会がオンラインのみとなったため、旅費を計画どおりに執行できなかった。同時に試料分析や論文執筆に大幅な遅れが生じたため、物品費なども執行が遅れている。次年度使用額のうち、旅費は野外調査および学会参加に使用し、物品費なども令和5年度中に全額を使用する予定である。
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