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2020 年度 実施状況報告書

QZSS-TECの地震学・火山学・超高層物理学への応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K04120
研究機関北海道大学

研究代表者

日置 幸介  北海道大学, 理学研究院, 教授 (30280564)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードマルチGNSS / TEC / 電離圏擾乱 / スポラディックE / レバノン爆発 / 内部重力波 / 津波地震
研究実績の概要

2020年度は大きく分けて以下の三つの研究実績がある
その1:QZSS-TECを用いたスポラディックE層(Es)の観測 日本国内のGNSS局を用いて、夏季の昼間に発生するEsの生成から消散までの進化をQZSSをはじめとするマルチGNSSで観測し、K-H不安定が作る空間構造の解明、L1/L2の組み合わせによるTECとL1/L5の組み合わせによるTECの比較などを初めて行った。これは今年度修士課程に進学した学生の卒業論文として推進され、今年度も修士課程の研究として継続される。
その2:GPS-TECを用いた2020年8月のレバノン爆発による電離圏擾乱の観測 イスラエルを中心に展開された地上GNSS局のデータを解析し、TECの擾乱信号をシミュレーション結果と比較した。その結果、2020年レバノン爆発が人工的な爆発としては核爆発以外で最大級の規模を持つ爆発であったことを立証した。この件に関しては、オープンアクセス誌で論文を2021年2月に発表し、国内外の様々なメディアに大きく取り上げられた。
その3:内部重力波が作る地震時電離圏擾乱の振幅の研究 地震時電離圏擾乱にはレーリー波が作るもの、直達音波(AW)が作るもの、内部重力波(IGW)が作るものの三種類が知られているが、IGWによる擾乱は巨大地震でしか見えないため、研究が進んでいなかった。本研究では初めて5個のM8-9クラスの地震後に見えたIGW起源のTECの変化を系統的に解析し、地震マグニチュードに対する振幅の依存性を解明した。また断層運動がゆっくり起こる「津波地震」は特別振幅の大きなIGWを励起することを2010年メンタワイ地震(スマトラ)のデータを解析して見出した。これは修士課程学生の修士論文の一部となっただけでなく、2021年度に国内外の複数の学会で発表が予定されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

理由その1 COVID19の影響の最小化 コロナ禍で旅行ができなくなったが、その分の予算を計算機環境の充実やオープンアクセスの論文発表に回すことができた。また国内外の学会はリモートで開催されたので、それらで積極的に発表することにより出張できない影響を最小に食い止めることができた。

理由その2 レバノン爆発の発生 予定にない事象として2020年8月にレバノン、ベイルートで発生した火薬庫の偶発的な爆発が、人工的な現象としては例外的に大きな音波を励起し、それが宇宙空間に達することによってGNSS-TEC法で検出可能な信号を作った。これらを報告した論文は2021年二月にSci. Rep.誌から出版され、北大からプレスリリースが行われた。事件の記憶が新しいこともあり国内外の多くのメディアで報道された。

理由その3 優秀な大学院生の存在 スポラディックEによるTEC変動のQZSSによる解析は2020年度に卒業研究を行った藤本達也(現修士1年)によって主に進められた。また2020年夏のベイルート爆発のTECデータは、それまで火球によるTEC変化などを卒業研究で取り組んでいた松下愛(現修士2年)によってモデル計算と比較された。また2010年メンタワイ地震の地震時電離圏擾乱は高坂宥輝(2021年3月修士修了)の修士論文として研究がすすめられた。これらの筆者が指導する学生の存在が研究を計画以上に進展させた原動力となった。

今後の研究の推進方策

今年度は、地震によって生じる内部重力波が作る電離圏擾乱についての論文発表が、国際学会(EGU)、国内学会(JPGU)と予定されており、また雑誌論文として春に投稿予定である。また夏に超高層物理と地震学の国際学会であるIAGA-IASPEI学術総会、および測地学の国際学会IAG学術総会がそれぞれリモートで開催され、すでに発表の申し込みを済ませている。それらの場で国内外の関係者との議論を通じて研究を進めてゆきたい。

次年度使用額が生じた理由

COVID19の影響で国内外の学術研究集会への出張旅費が未使用となり、次年度の出張に繰り越すこととした。2021年度後半には多少出張が行えるようになることが予測されるので、そこで使用する計画である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] National Institute of Technology(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      National Institute of Technology
  • [国際共同研究] ITS Surabaya(インドネシア)

    • 国名
      インドネシア
    • 外国機関名
      ITS Surabaya
  • [雑誌論文] Atmospheric wave energy of the 2020 August 4 explosion in Beirut, Lebanon, from ionospheric disturbances2021

    • 著者名/発表者名
      Kundu, B., B. Senapati, A. Matsushita, K. Heki
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: 2793

    • DOI

      10.1038/s41598-021-82355-5

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 3-D tomography of the ionospheric anomalies immediately before and after the 2011 Tohoku-oki (Mw9.0) earthquake2020

    • 著者名/発表者名
      Muafiry, I. N. and K. Heki
    • 雑誌名

      J. Geophys. Res. Space Phys.

      巻: 125 ページ: JA027993

    • DOI

      10.1029/2020/JA027993

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Harmonic ionospheric oscillation by the 2010 eruption of the Merapi volcano, Indonesia, and the relevance of its amplitude to the mass eruption rate2020

    • 著者名/発表者名
      Cahyadi, M. N., R. W. Rahayu, K. Heki, Y. Nakashima
    • 雑誌名

      J. Volcanol. Geothermal Res.

      巻: 405 ページ: 107047

    • DOI

      10.1016/j.jvolgeores.2020.107047

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Integrated space geodetic study of the 2019 Typhoon Habigis: Signatures in troposphere, lithosphere, and ionosphere2020

    • 著者名/発表者名
      Heki, K., S. Arief, W. Zhan
    • 学会等名
      JPGU-AGU Joint Meeting
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Ionospheric TEC changes immediately before and after the 2010 Mentawai earthquake, Indonesia2020

    • 著者名/発表者名
      Takasaka, Y. and K. Heki
    • 学会等名
      AGU Fall Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 3D-tomography of the ionospheric anomalies immediately before and after the 2011 Tohoku-oki (Mw9.0) earthquake2020

    • 著者名/発表者名
      Muafiry, I. N. and K. Heki
    • 学会等名
      AGU Fall Meeting
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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