研究課題/領域番号 |
20K04122
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
東 龍介 東北大学, 理学研究科, 助教 (70620540)
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研究分担者 |
高木 涼太 東北大学, 理学研究科, 助教 (10735963)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本ー千島海溝会合部の地震活動 / 微動と通常地震の時空間的活動関連性 |
研究実績の概要 |
北海道襟裳沖の日本・千島海溝会合部で活動する浅部微動・超低周波地震の実態把握に向けて、本年度は、研究海域における(1)2003年十勝沖地震の余震観測と2006-2007年の機動海底地震計観測、および(2)ケーブル式海底地震観測網S-netと2019-2020年の機動広帯域海底地震計観測のデータ解析をそれぞれ実施し、テクトニック微動と通常地震の活動状況を調べた。(1)の観測網は期間・領域が異なるため各々の期間中の微動活動を直接比較できないが、S-netによる先行研究(微動帯の活動)との比較から、どちら領域でも基本的な空間構造を維持しつつ、S-net以後に比べ極めて短い間隔で微動が発生していたことがわかった。現在よりも活動間隔が短いことは、2003年十勝沖地震の余効滑りが速い速度で進行中でありプレート境界滑りが非定常であったことを反映する。(2)微動帯よりも海溝側に、微動帯の活動に追随して発生する微動を発見した。それらの移動速度は流体拡散モデルで説明可能であったことから、プレート境界での流体移動には、先行研究で明らかとなっていたプレート境界の等深線に沿う方向だけでなく、プレート境界深部から浅部へ抜けていく動きもあることを示唆した。また、バースト発生する相似地震活動も検出され、微動活動との時空間的な関連性が今後の検討課題である。 さらに、地震活動とプレート境界構造の時空間変動を明らかにするため、(3)2006-2007年の観測データに地震波干渉法解析を適用し、微動活動に伴う有意な速度変化は認められないものの、観測網近傍の中規模地震に伴う地震波速度低下を検出しし、その空間分布が地震波の距離減衰に則ることを示した。また、(4)S-netで観測された常時微動に地震波干渉法解析を適用し、表面はトモグラフィーにより日本海溝沿いの微動分布に対応する表面波位相速度の低速度異常を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新旧の海底地震観測データの解析から現在と昔の日本・千島海溝会合部で微動帯活動の大局的な空間特徴、プレート境界の滑り速度と活動間隔との関連性が明らかとなった。さらに、微動帯よりもプレート境界浅部側でも時空間的に関連性のある微動が発見され、背景の流体の広がり方が把握されつつある。一方で、そうした流体分布の時間変化を示唆するような傾向は、自己相関解析による構造の時空間モニタリングでは示されていないことから、流体が存在するにしても構造解析では検知できない分布様態である可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
大規模な微動活動では超低周波地震が同期発生することが知られている。(2)で大規模な微動帯活動が観測された期間を中心に超低周波地震の信号を探索し、陸上観測網ではなしえなかった高精度の震源位置推定を試みる。また、地震波形の相関解析をS-net運用開始後の全期間の連続データに適用し、バースト相似地震の活動実態の把握を試みる。(3)の知見をもとに、地震波干渉法やレシーバ関数解析法などを用いてプレート境界周辺構造を推定し、スロー地震発生場を特徴付ける構造の抽出を試みる。
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