研究課題/領域番号 |
20K04123
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
渡辺 寧 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (90358383)
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研究分担者 |
越後 拓也 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (30614036)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱水性銅鉱化作用 / 斑岩銅鉱床 / 鉱脈型鉱床 / 東北日本弧 / 硫黄同位体組成 / K-Ar年代 |
研究実績の概要 |
令和3年度は,チリ,インドネシア,東北日本弧の銅鉱床(エルサルバドル,グラスベルグ,荒川,その他)の試料について1)K-Ar年代測定を実施し,秋田県阿仁鉱床から10.65 Ma,白子森鉱床から3.4Ma,グラスベルグ鉱床下部の黒雲母・白雲母変質帯から3.49-3.26Maの鉱化年代を得た.2)これらの鉱床の硫化鉱物,硫酸塩鉱物の硫黄同位体組成分析を実施し,グラスベルグ鉱床下部のGajah Tidur斑岩銅モリブデン鉱床での同位体平衡温度から,それぞれの鉱床のカリウム変質,白雲母変質をもたらした熱水の温度を得た.3)秋田県荒川鉱床の関係火成岩の塩基性包有物の鉱物化学組成分析をもとに,荒川銅鉱化作用をもたらしたマグマの成因を考察した.4)秋田県の赤石鉱床,畑鉱床に産する重晶石の酸素・硫黄同位体測定を実施した.これらの分析結果から下記の結論を得た.1)荒川地域では,玄武岩マグマの分別結晶作用に形成された安山岩質マグマと地殻に存在した流紋岩質マグマが2:1の割合で混合することにより銅に富むデイサイト質マグマが形成され,デイサイト質マグマが固結する際に熱水が分離し,銅も硫黄とともに主として流体相に分配され,熱水性銅鉱床の形成に至った.2)グラスベルグ鉱床では,深部の鉱化作用に対して,熱水変質鉱物の組み合わせと分布,白雲母の化学組成,K-Ar年代,変質作用に伴う硫化物・硫酸塩鉱物の硫黄同位体組成に基づき,深部のGajah Tidur斑岩銅システムと浅部のMain Grasbergシステムにわかれること,深部のGajah Tidurの鉱化年代は約3.4MaでMain Grasbergの鉱化年代(3.1Ma)よりも古いこと,Gajah TidurはMain Grasbergよりも低温での鉱化作用であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍にありながら1)各種分析のための試料調整が順調に進展し,顕微鏡観察,硫黄同位体,流体包有物の観察,マイクロサーモメトリー実験を実施できたこと,3)K-Ar年代の結果を得られたことによる.また研究成果として昨年度に引き続き5編の論文を査読付き国際誌に発表できたことによる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる令和4年度には,これまで得られたデータ,およびグラスベルグ鉱床の熱水変質鉱物の酸素・水素同位体分析(令和4年度分析)結果をもとに銅の濃集・沈殿をもたらした要因(鉱床形成にかかわったマグマの酸化還元度,熱水中の卓越硫黄種,鉱床形成場の温度圧力条件)を考察し,斑岩銅鉱床,鉱脈鉱床それぞれの形成条件を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ蔓延防止措置に基づき出張計画に遅れが出た影響で一部の分析が翌年度持ち越しとなったため
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