研究課題/領域番号 |
20K04127
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
平松 良浩 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (80283092)
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研究分担者 |
岡田 真介 岩手大学, 理工学部, 准教授 (50626182)
田中 俊行 公益財団法人地震予知総合研究振興会, 東濃地震科学研究所, 主任研究員 (60462941)
本多 亮 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (70399814)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 重力異常 / 活断層 / 長者ヶ原―芳井断層 / 重力勾配テンソル / 断層構造 / 連続性 |
研究実績の概要 |
本年度は広島県南東部から岡山県南西部に位置する右横ずれ断層である長者ヶ原―芳井断層を対象とした重力測定および重力異常データの解析、並びに複数の地下の断層構造がつくる重力異常および重力勾配テンソルから計算される諸指標を計算するシステムの開発を行った。以下にその概要を示す。 2020年9月13日から19日、および2020年11月29日から12月5日にかけて長者ヶ原―芳井断層周辺において、Scintrex社製CG-3M型重力計を用いて重力測定を行い、計209点の新規重力測定データを得た。これらの測定データと既往の重力測定データを用いて、2550 kg/m3 の補正密度でブーゲー補正および地形補正を行い、さらにトレンド処理およびフィルター処理を行い、ブーゲー異常データを作成した。 重力勾配テンソルから計算される水平一次微分(HD)、鉛直一次微分(VD)、TDXの空間分布から、両断層に対応する地下の断層構造の存在が示唆される。一方、神辺平野の断層沿いにはこれらの指標の特徴的な分布は見られなかった。しかし、神辺平野の断層上での二次元密度構造解析からは、平野下に鉛直変位量60 mの断層の存在が示唆される。また、次元指数(Di)は、長者ヶ原―芳井断層上で二次元的な構造を示すが、芳井断層と神辺平野の断層間では三次元的な構造を示し、芳井断層と神辺平野の断層は断層構造としては不連続である可能性が考えられる。 複数の地下の断層構造による重力異常および重力勾配テンソルの計算からは、断層間の距離と観測点間の距離の関係により、地下の断層構造が正しく検出できなくなることや断層の傾斜角が低角な場合は固有ベクトルの選択が逆になることが明らかとなり、観測結果の解釈の高度化に資するシステムの構築を達成できた。 2021年3月2日にはオンラインにてワークショップを開催し、本年度の解析結果および次年度の研究計画を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長者ヶ原―芳井断層周辺での稠密な重力測定、既往重力測定データのコンパイル及び高精度地形グリッドデータを用いた地形補正により、従来よりも高精度かつ断層帯周辺での空間分解能が高いブーゲー異常データを得た。既往研究では明らかとなっていない長者ヶ原断層、神辺平野の断層、芳井断層の連続性や地下の断層構造の存在に関関する情報を新たに得ることができた。 また、複数の地下の断層構造による重力異常および重力勾配テンソルの計算システムによるシミュレーションより、重力測定点分布の粗密や断層構造の傾斜角により、地下の断層構造の検出や解釈を誤る可能性を定量的に示すことができ、重力異常データの活用のさらなる高度化を促す結果を得ることができた。 長者ヶ原―芳井断層に関する重力異常データの解析結果については2021年10月開催の日本地震学会秋季大会にて発表を行う。 上記のことから現在までの進捗状況は概ね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は前年度に実施した長者ヶ原―芳井断層の解析結果のとりまとめを進めるとともに、島根県から山口県にかけて分布する大原湖断層・小郡断層において、重力測定を実施する。既往重力測定データとのコンパイルと高精度地形グリッドデータを用いた地形補正を行い、断層帯周辺の高精度重力異常データを作成する。得られたデータの重力勾配テンソル解析を行い、それから計算される諸指標(地下の断層構造を特徴付ける水平・鉛直一次微分、次元指数、傾斜角等)の空間分布を求め、モデル計算結果との対比から、上記の2地域の横ずれ断層の地下の断層構造の端点やセグメント境界を特定する。
また、長者ヶ原―芳井断層や大原湖断層・小郡断層に関わる地形・地質データを検証し、重力勾配テンソル解析の結果と対比することにより、地表の活断層分布と地下の断層構造の空間的な対応関係を評価する。その結果に基づき、対象とする横ずれ断層で発生する地震規模を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ対応のため予定されていた出張を全て遂行できなかったため、次年度使用額が生じることとなった。この次年度使用額は旅費として使用する。
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