研究課題/領域番号 |
20K04129
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤田 清士 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00283862)
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研究分担者 |
佐久間 博 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (20400426)
芳野 極 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (30423338)
市來 雅啓 東北大学, 理学研究科, 助教 (80359182)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電気伝導度 / 溶融 / ガラス転移点 / 岩石 / 鉱物 |
研究実績の概要 |
溶融温度近傍付近の鉱物・岩石の電気伝導のメカニズムについては研究の途上にある。特に、溶融状態の『鉱物+水』や『岩石+水』の反応の解明が十分でなく、様々な温度・圧力・化学組成での電気伝導度データが不足している。又、電気伝導度の定量化モデルの研究は十分に遂行されてこなかった。申請者らは、含水岩石や含水鉱物が溶融する温度近傍やガラス転移点付近で、電気伝導度が変化をする事に着目した。溶融温度近傍の状態を電気伝導度の視点から室内実験で再現すると同時に、“溶融”を分子動力学法など用いて定量的なモデル化及びシミュレーションすると、溶融に関する解釈を、観測―実験―理論の比較で急速に発展させることが可能になる。 2020年度は予備実験を計画した。溶融状態の電気伝導度を測定するため、単結晶を用いた試料封入カプセルを作成し、その有効性を確認する。次に、岩石の溶融が“液相+固相”になってもその場観察できるような完全な“閉じた系”において厳密な電気伝導度測定を行なう。同時に、分子動力学計算を用いて、事前に“溶融状態”のモデル化を行うこと計画した。 申請者等は高温・高圧における電気伝導度測定を数多く行なってきた経験があり、溶融領域での実験手法が確立しつつある。他方、近年の計算アルゴリズムの発展により、分子レベルの複雑な運動方程式は計算機上でシミュレートすることが可能である。特に分子動力学法は熱力学的平衡状態だけでなく、時間変化を含む非平衡現象も再現できる強みがある。そのため、岩石・鉱物の『溶融』状態の電気伝導度を温度・圧力を考慮して、モデル化し、計算機シミュレーションすることを計画した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は予備実験を開始した、溶融状態の電気伝導度を測定するため、単結晶を用いた試料封入カプセルを作成し、その有効性を確認した。カプセル及び電気伝導度測定用圧力媒体・測定セルを改良した。玄武岩組成の岩石の溶融が“液相+固相”になってもその場観察できるような、厳密な電気伝導度測定を行なった。しかしながら、岡山大学惑星物質研究所で行うマルチアンビルを用いた高温・高圧での測定は、コロナウィルス感染拡大により、往来が制限されたため、十分な実験期間を確保できなかった。 ニューラルネットワーク計算や分子動力学計算を用いて、事前に“溶融状態”のモデル化を行う計算機実験も、コロナウィルス感染拡大によりに十分な打ち合わせができなかった。そのため、東北大学ー物質・材料研究機構ー大阪大学を遠隔システムで繋ぎ、データ共有を行い、材料科学に関する基礎的理論に関するセミナーを行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、申請者等は高温・高圧における電気伝導度測定を数多く行なってきた経験があり、溶融領域での実験手法を2020年度の予備実験で確立した。計算アルゴリズムを用いた計算機上での電気伝導度推算はニューラルネットワークの手法を用いた。又、分子動力学法は熱力学的平衡状態だけでなく、時間変化を含む非平衡現象も再現できる強みがあるため、今後はMD計算にも注力する予定である。岩石・鉱物の『溶融』状態の電気伝導度を温度・圧力を考慮して、モデル化し、計算機シミュレーションすることを2021-2022年度に遂行する予定である。実験及び計算を組み合わせることにより、溶融状態の電気伝導度の定量的解釈の議論が進展する。 実験結果だけでは解明できない、岩石内の微視的な状態を解明することも、本研究の目的であるため、実験及び計算機解析をさらに推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナウィルス感染拡大により、共同利用施設である岡山大学惑星物質研究所との往来が制限され、高温・高圧実験が十分に遂行できなかった。 2021年度は、実験回数を増やし、絶縁材料・熱電対・単結晶材料などを購入することを計画している。又、岡山大学へ実験に行くための出張旅費や物質・材料研究機構への研究打ち合わせの旅費執行を計画している。
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