研究課題/領域番号 |
20K04131
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
野口 直樹 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (50621760)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 拡散 / 拡散クリープ / 氷 / 変形 / 氷天体 / ラマン分光 / 同位体 |
研究実績の概要 |
地球をはじめとする岩石型惑星と大型氷天体のマントルにおいては、低応力条件下で構成物質が熱対流している。そのような低応力条件では物質は拡散クリープ機構で塑性変形することによって流動すると考えられている。本研究では拡散クリープのメカニズムをはっきりとさせるため、氷や地球内部アナログ物質の低応力条件での変形実験を行い、ラマン同位体イメージングによって、拡散クリープの直接的な証拠である応力誘起拡散を可視化することを目指す。 令和2年度は、氷拡散対の高空間分解能同位体イメージングを行うために必要な、低温顕微ラマン分光装置の開発に注力した。液体窒素連続フロークライスタットを精密XYZステージの上に固定し、位置調整できるようにした。これを顕微ラマン分光器の下に設置し、低温条件(~70 K)で氷試料のラマンスペクトルが測定できるようになった。また、この装置に顕微赤外分光器も組み合わせ、氷拡散対の赤外分光測定も行えるようにした。それから、拡散対として用いる空隙のない等粒状の氷多結晶体を作成するための装置の準備を進めた。 構築した顕微ラマン・赤外分光システムを用いて、試験的に高圧氷VI相の拡散実験を行った。高圧氷VI相は室温下では1 GPa (1万気圧)であり、ダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を用いれば作成することができる。この実験により、過去に報告されている高圧氷VI相の水素拡散係数(Noguchi and Okuchi 2020)と概ね同じ値が得られ、このシステムで氷試料の拡散実験ができることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通りに、年度内で低温顕微ラマン分光装置の立ち上げをすることができた。しかし、クライオスタット用のZステージの剛性が予想より低かったため、クライオスタットの振動が試料に伝わるという問題が生じており、高空間分解能ラマン同位体イメージングをまだ実現できていない。氷多結晶体の粒界拡散を調べるために、今後、低温顕微ラマン分光測定の空間分解能が1μmに達するように、装置をさらに改良し振動を抑えるようにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
高空間分解能ラマン同位体イメージングを実現するためにクライオスタット用のZステージを剛性の高いクサビ型ローラガイドステージに変える。また、顕微鏡の共焦点系を改良し、光学的にも分解能の向上を目指す。今年度は、氷多結晶体拡散対の低応力変形実験にも着手する。変形後、回収した試料のラマン同位体イメージング分析を行う。そのために、変形実験中の氷試料の昇華を防ぐために低融点金属チューブに、氷を封入する方法も開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 実験装置の開発に時間を使ってしまって、当初予定していた氷試料の変形実験を実施できなかった。このために、申請時に計上していた氷変形実験装置の開発は次年度に実施することになり、次年度使用額が生じた。 使用計画: 氷変形実験装置の開発に要する実験費を物品費と併せて使用する予定である。
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