研究課題/領域番号 |
20K04132
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
相澤 広記 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50526689)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バソリス / 花崗岩 / マグマだまり / 比抵抗 / マグマ供給系 |
研究実績の概要 |
本研究はマグマ供給系の化石(高電気比抵抗)の形状から、通常の手法では推定が簡単ではない活火山のマグマ供給系について洞察を得ることが目的である。対象とするのはバソリスとリング状貫入岩体が地表に露出している大分―宮崎県の県境付近に位置する大崩山である。研究2年度は初年度に得たデータの解析から、追加観測の必要性を感じた地域で13か所の広帯域MT観測点を展開し、地下比抵抗構造を推定するための良好な応答関数 (周期0.005~3000秒) を得た。既存データとあわせ100点のデータを用いた3次元解析により比抵抗構造推定を行い、地表のリング状貫入岩体の分布に対してやや広がりをもった3000Ωm前後と高比抵抗な異常体が推定された。高比抵抗体の厚みは5 kmを超えているため、地下で固結したマグマだまりの体積は3000 km3以上と推定された。大崩山のマグマの噴出量がおよそ370 km3と推定されることから、地表に噴出したマグマは生産されたマグマ全体のおよそ1割程度となる。予想外の結果として、大崩山東部、および西部において、高比抵抗体が欠けている領域があることが分かった。この結果は、マグマだまりが地下でレンズ状に広がりそこからリング状にマグマが貫入することで地表に見られる貫入岩体が形成されたという教科書的な考えと合致しない。マグマだまりに対して鉛直なマグマ貫入域と、そこからさらに側方にマグマが移動した領域の2つの存在を考える必要がある。この考えはリング状貫入岩体の帯磁率異方性から推定された考え (Kanamaru et al., 2021) と合致した。また、深さ15 km付近の群発地震活動域は高比抵抗体の西縁に位置することが分かった。この群発地震は、2011年東北太平洋沖地震以降に活発化したため、高比抵抗体のへりに流体が存在していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの観測・解析により地下のバソリス(固結したマグマだまり) の3次元形状がイメージングすることができた。研究に必要なデータ取得はほぼ終了した状況である。3次元解析によりリング状貫入岩体内部にもかかわらず高比抵抗体 (バソリス)が欠落している領域が大崩山の東部と西部に存在することは予想外であった。信頼性の高い比抵抗構造から、バソリス3次元形状を推定でき、これによって岩石学的研究から推定されているマグマ貫入プロセスとの対応、地震活動との対応を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、次年度でアクセスが最も困難、かつ研究にとって重要な地域で観測を行った。最終年度は3次元解析により構造がどこまで拘束されているかを明らかにし、必要性があれば補充観測を行う。石学的研究から推定されているマグマ貫入プロセスとの対応、地震活動との対応を検討し、まとめた結果の論文化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の一部、通信費を多経費で負担したため。
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