研究実績の概要 |
本研究は地球惑星科学に極めて重要な白亜紀における国際対比が可能な時間軸を、日本の白亜系堆積物に対して提供しようとするものである。具体的には、白亜系堆積物に対して最適な還元化学消磁(RCD)を開発し、効率的な二次磁化除去手法を確立することを目的としている。地磁気逆転境界を見出し、磁気層序を確立することで、サントニアンーカンパニアン境界を挟む年代軸を付与する。白亜系のような古い岩石の磁気層序の確立は、いかに二次磁化を消去するかが最大の鍵となる。効率的な二次磁化除去手法の確立は堆積物の古地磁気研究にとっても極めて意義が大きい。 本年度は既収集の試料のハイブリッド消磁実験を主に進めた。それ以外に、還元化学消磁と磁性鉱物の関係について、熊本大学等で実験を進めた。 ハイブリッド消磁は蝦夷層群羽幌川層のUg, Uh, Ui-j部層の30試料あまりについて詳細に行った。消磁手順は、50, 75, 100, 140, 180度 5ステップの熱消磁の後に2.5, 5, 7.5, 10, 15, 10, 30, 35, 40, 45, 50, 60, 70, 80, 100mT 15ステップの交流消磁を行った。今回測定した13サイト35試料(うち5試料は熱消磁のみ)の結果を正帯磁と判断される試料、逆帯磁と判断される試料、いずれとも判断できない試料と分類すると、正帯磁18試料、逆帯磁4試料、いずれにも当てはまらないもの13試料であった。正帯磁を示す18試料のうち、14試料は傾動補正前の方位より、傾動補正後の方位の方が想定される磁気方位の方へ動いており、簡易な傾動補正を満たすものになっていることは注目すべきで、得られた極性の信頼度を増すものとなっている。ただ、同じサイトから収集された試料の極性が矛盾するサイトもあって、現在検討を進めている。
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