研究実績の概要 |
本研究は地球惑星科学に極めて重要な白亜紀における国際対比が可能な時間軸を、日本の白亜系堆積物に対して提供しようとするものである。北海道苫前地域の蝦夷層群の白亜系堆積物に対して最適な消磁手法を開発し、効率的な二次磁化除去手法を確立することを目的としている。 昨年度まで、交流消磁、熱消磁、化学消磁、などを試行して来たが、いずれも捗々しい結果が得られていない。本年度は交流消磁+熱消磁のハイブリッド消磁を多数の試料に試して、初生磁化成分を維持していると見られる試料を見出すこと、初生磁化成分の抽出を妨げている磁性鉱物の同定のために岩石磁気測定を進めることを中心に作業した。 その結果、変質により二次的に晶出し化学残留磁化を獲得している磁性鉱物は主に硫化鉄(ピロータイトやゲーサイト)であることが、各種岩石磁気測定から明らかとなった。これらの硫化鉄は、保磁力が高く交流消磁で消磁ができないことに加えて、交流磁場により不安定な磁化を獲得することがある。また、熱消磁ではある温度帯(400度程度)で熱変質を起こし、マグネタイトやヘマタイトとなり二次的な化学残留磁化を獲得する厄介な磁性鉱物である。 ハイブリッド消磁法では、部分熱消磁による硫化鉄の押さえ込みについては成功していると考えられる。しかし、その後の交流消磁において、多磁区粒子が不安定な挙動を示すため初生磁化の抽出が困難になっていると推定した(穴井・小田, 2022, JpGU要旨)。そこで、多磁区粒子の不安定な挙動を最小限にとどめるために、熱消磁で硫化鉄成分を消磁した後に2G-SRMの定置交流消磁装置を使用し、1軸(SRMのz軸方向)のみの段階交流消磁を試みた。この結果、不安定な成分を抑制し、完全ではないものの初生磁化成分の抽出が可能となった。この結果についてJpGU2024で報告予定である。
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