研究課題/領域番号 |
20K04137
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小玉 一人 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (00153560)
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研究分担者 |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (00452699)
佐藤 雅彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50723277)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハイブリッド磁化率計 / 磁性粒子 / 岩石磁気 / 粒度分布 / 環境磁気 |
研究実績の概要 |
研究初年度は、本研究の核となるハイブリッド磁化率計の基本機能の策定および設計、それにもとづく試作機の開発に着手した。満たすべき基本機能は以下の4項目である。1)数十ミクロンの単結晶から数㎝程のバルク試料まで多様なサイズの試料を扱えるセンシング機構2)試料の微小な磁化率を自励固有周波数変化に変換する高帯域周波数測定機能、3)パルス高周波シグナルを数ミリ秒でメモリーに読み込む高速デジタル処理機能、4)リアルタイムで数値処理・画像処理するためのソフトウェア開発。1)は、微細多層コイルを積層プリント基板内に配置した一体型センサー、高密度表面実装4層基板によるアナログ・デジタル一体型電子回路の採用、および非磁性エンジニアリングプラスチックを微細加工したサンプルホルダの利用によって実現できる見込みを得た。2)は1キロヘルツから数百キロヘルツ程度の可変高周波数変調、および数ミリボルトから数ボルトの振幅変調を併用した独自電子回路を設計した。3)は12~16ビット高速アナログ‐デジタル変換素子、および数メガバイト~数10メガバイトの大容量高速メモリーへのDMA転送機能を備えたマイクロコントローラボードを試作した。その予察的結果にもとづき、同等性能でよりコンパクトなFPGAボードを設計することとした。4)は、C言語によるマイクロコントローラ用ファームウェアの設計・記述、Pythonによるreal-timeデータ処理プログラムの試作、Verilog言語を用いたFPGAボードによる高速デジタルデータ処理系の試作などによって、所期の目的を達しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多層プリント基板内に同心円状の平面センサーコイルをプリントする方法により、感度向上とノイズ低減を実現できることがわかった。この基板内にコンデンサーCを配置することにより、LC共振回路へのパルス入力による固有減衰振動を連続的に励起できる。この方法により、固有振動周波数を用いた周波数領域の磁化率測定と、減衰振動曲線の包絡線を利用した時間領域のスペクトル測定を同時に行うことができる。数kHzの連続パルスを与えてデータを積算すればS/N比の一層の向上が期待できるうえ、短パルスなので低消費電力でありバッテリー駆動ができる。これらの特徴を備えたハイブリッド磁化率計のプロトタイプを製作し、今後の改良に利用する。最終的には、基板内の平面コイルの形状を工夫して試料面に直接接触させて測定することにより、野外でも利用可能な小型可搬磁力計の製作も目指す。
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今後の研究の推進方策 |
単結晶(ジルコンや斜長石)に含まれる微細磁性鉱物の定量分析や、超微細磁性粒子(SP粒子)に着目した粒度分布法としてハイブリッド磁化率計を活用することにより、最先端の岩石磁気研究や環境磁気学研究への応用展開を図る。さらに、粒度分布を考慮した新しい規格化手法を開発し、堆積物を用いた相対古地球磁場強度データの再検討と新展開を図る。プロトタイプのハイブリッド磁化率計を複数製作し、研究分担者以外の関連研究者にモニター使用を依頼することにより、機能や性能の改善を図るとともに、新しい実用的な岩石磁気・環境磁気測定機器としてのハイブリッド磁化率計の活用を提案する。あわせて、IODP掘削コア(南海トラフ・伊豆背弧)、日本近海ピストンコア試料、中国黄土試料など、多様な起源や磁性をもつ試料に測定範囲を拡大し、SP粒子の時空変化と種々の環境因子(ダストフラックス、降雨量など)との相関を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ハイブリッド磁化率計に備わる機能を実現するには、特殊な素材と微細加工技術を要するため、センサーコイルや電子回路基板など一部の重要部品は外注を予定していた。しかし、昨今の受注生産や物流の停滞により、特殊部品の外注製作に予想以上の期間を要したため、代替部品の使用を余儀なくされたり、初年度内の製作が困難となった部品もある。そこで、本来の性能や機能をもつハイブリッド磁化率計に改修するため、経費の一部を次年度使用する。次年度も引き続き外注には困難が予想されるため、重要部品は自作することとし、そのための小型微細加工用3Dプリンタを購入する経費とする。
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