研究課題
本年度は、これまでのハイブリッド磁化率計(以下、磁化率計)の試作検討をもとに最終試作機の開発に着手した。その基本機能は、1)微弱な磁化率を自励固有周波数変化に自動変換する高帯域周波数測定機能、およびパルス磁場による磁化緩和を時間領域で高速測定する機能、2)数㎜から数㎝程まで多様なサイズの試料を測定可能な高感度センシングコイル、3)数10kHz~100kHzの高周波シグナルを数ミリ秒の短時間にサンプリングしてメモリー転送する高精度ADCとMCU、4)USBによる高速データ転送機能、5)Windows、Linux、iOS、AndroidなどのOSやハードウェアによらず、リアルタイム数値処理可能な汎用ソフトウェア。1)2)は、共振周波数に応じて巻数を調整した複数の多重同心円コイルを、多層プリント基板内に積層した一体型複合センサーである。3)は、高精度(18~24ビット)高速(>1MSPS)ADCと32bitMCUによるDMA、4)は、USB3によるフルスピードバルクデータ転送、5)は、C/C++言語によるファームウェア、FPGA(HDL)による高速メモリー転送と数値処理、およびバイナリデータをリアルタイムデコードするPC側アプリによって実現する。そして、周波数領域と時間領域のデータをFFT/逆FFTによって相互変換することにより、多次元の視覚化データとそれらの数値処理が可能な多機能磁化率計を目指す。最終的には、微細磁性鉱物の定量分析や超微細磁性粒子に着目した粒度分布法として磁化率計を活用することにより、最先端の岩石磁気研究や環境磁気学研究への応用展開を図る。
3: やや遅れている
積層プリント基板内に複数の共鳴コンデンサを配置することにより、LC共振回路へのパルス入力による固有減衰振動を連続的に励起することができることがわかった。さらに数10Hzの連続パルスによるデータ積算と、バッテリー駆動による低消費電力を組み合わせれば、野外での活用も期待できる。これらの機能を実現するには、最新の省電力高機能半導体が必須であるが、昨今の厳しい半導体市況のため入手が困難なものが多い。特に本研究の核となる高速ADCや高機能MCUは影響が大きい。やむを得ず機能不足の代替品を使用したため、テストや回路再設計に時間を要し、当初の計画よりも進展がやや遅れた。今後は、基本機能を備えた磁化率計のプロトタイプを複数製作して改良する。基板内の形状や部品配置の最適化、入手可能な半導体を活用した回路の小型化・最適化、制御ソフトウェアの改良を重ねて、さまざまな形状やサイズの試料ばかりでなく、野外でも利用可能な小型可搬多機能磁化率計の完成を目指す。
微細磁性鉱物の定量分析や超微細磁性粒子に着目した粒度分布法として磁化率計を活用することにより、最先端の岩石磁気研究や環境磁気学研究への応用展開を図る。さらに、粒度分布を考慮した新しい規格化手法を開発し、堆積物を対象とした古地球磁場強度データの再検討と新展開を図る。プロトタイプの磁化率計を複数製作し、研究分担者以外の関連研究者にモニター使用を依頼することにより、機能や性能の改善を図るとともに、新しい実用的な岩石磁気・環境磁気測定機器としての磁化率計の活用を提案する。このような磁化率計に備わる機能を実現するには、特殊な部品・素材と微細加工技術を要するため、センサーコイルや電子回路基板など一部の重要部品は外注を予定していた。しかし、昨今の受注生産や物流の停滞・半導体不足により、特殊部品の外注製作に予想以上の期間を要したため、当初の製作が困難となった部品もある。そこで、本来の性能や機能をもつ磁化率計を完成させるため、研究計画を延長して経費の一部を次年度使用する。
磁化率計に備わる機能を実現するには、特殊な半導体や素材および微細加工技術を要するため、センサーコイルや電子回路基板など一部の重要部品は外注を予定していた。しかし、昨今の世界的な半導体不足や物流の停滞により、特殊部品の発注製作ばかりでなく自作部品の製作にも予想以上の時間を要したため、代替部品の使用を余儀なくされたり、期限内の製作が困難となった部品もある。そこで、本来の性能や機能をもつ磁化率計を完成させるため、経費の一部を次年度使用する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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