研究課題/領域番号 |
20K04139
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研究機関 | 国立研究開発法人建築研究所 |
研究代表者 |
北 佐枝子 国立研究開発法人建築研究所, 国際地震工学センター, 主任研究員 (10543449)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 長期的スロースリップ / 短期的スロースリップ / スラブ内地震 / メカニズム解 / 応力テンソルインバージョン |
研究実績の概要 |
令和3年度は、昨年度までに見出していた紀伊半島での相似地震活動の意味について考える研究を行った。前年度までに紀伊半島周辺では、志摩半島からその沖にかけて、南海トラフ地震の想定震源域があり、その縁(遷移域とよび)で相似地震が発生することがわかった。そして、相似地震活動は短期的スロースリップの発生直後もしくは数ヶ月後に,発生することを見出していた。詳しく検討したところ、発生周期6ヶ月の紀伊半島での短期的スロースリップ発生前後でのスラブ内の応力軸の変化量は、短期的スロースリップ発生域よりも遷移域のほうが大きく(12度)、そして後者は3ヶ月かけて元に戻っている。もし、その時期には小さなスロー地震(今回の場合は相似地震)が遷移域で起きることによる地殻変動により応力軸が元に戻るとすれば、説明可能なことがわかった。相似地震は小さな規模のスロースリップ発生のインディケータとして知られているが、Igarashi [2020, EPS]の論文で報告されている相似地震カタログを調べると、紀伊半島の短期的スロースリップの発生後に相似地震が2グループ起きていることがわかった。 またこの「これまで指摘されてなかった遷移域での小さなスロースリップ」の重要性は、下記の通りである。短期的スロースリップが発生した後、より浅部のプレート境界である遷移域にスロースリップが伝搬していき、それに伴い応力集中が遷移域から南海トラフ地震想定震源域に移っていくと言う、海溝型巨大地震の応力蓄積過程が見えてきたことを意味するからである。これらの成果を含む内容は、米国地球物理学会での口頭発表、nature communicationsの論文発表等で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していたよりも、短期的スロースリップの研究に関しては、それが発生した後、より浅部のプレート境界である遷移域にスロースリップが伝搬していき、それに伴い応力集中が遷移域から南海トラフ地震想定震源域に移っていくと言う、海溝型巨大地震の応力蓄積過程まで見えてきた。よって相似地震 画期的な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
相似地震活動、スロースリップ及びスラブ内地震の活動が、連動することが見えてきた。この部分についてのさらなる検証やメカニズムの追求は、将来の地震予知を念頭におくと、極めて重要である。 また、応力変化量の信頼範囲の推定や、出てきた応力変化が生じるメカニズムのさらなる解明追求が大切である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航をしていたこと、感染症対策のため、当初予定していた予算を次年度に繰り越す必要が出てきた。
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備考 |
成果に関する新聞報道などもあり。 建築工業新聞(2021.12.22):南海トラフ地震 詳細な固着はがれを検出 共同研究論文,英国誌に掲載 建築通信新聞(2021.12.22):ゆっくりすべり とスラブ内地震の連動 地下深部の水の移動が原因
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