令和4年度は、豊後水道の長期的スロースリップとスラブ内地震の連動性に関する研究を進めた。豊後水道のスロースリップの発生前後でも応力軸の変化は短期的のそれよりも大きく最大20度以上で回転し(dip方向)、さらには長期的スロースリップ開始前の「前兆現象」が見つかった。すなわち、スロースリップ開始前の1年の間に、スラブの応力軸(圧縮軸、sigma1)の一時的な回転を見つけた。この結果は他の手法などでの検証が必要ではあるが、少なくとも豊後水道ではスロースリップ発生時期予測が可能かもしれない。これらの成果は、5月に日本地球惑星科学連合、9月に国際研究集会、10月に日本地震学会にて研究成果を発表した。11月にはロサンゼルスへ1週間滞在し、研究協力者のHeidi Houston教授の所属する南カリフォルニア大に赴き、地震データ解析研究の打ち合わせ、追試、論文作成等を行った。加えて、近郊のカリフォルニア工科大学にも出向き、金森博雄名誉教授等との研究打ち合わせも行い、日米の最新の研究動向に関する知見交換も行った。 近年、地震観測に関する新技術DASが世界的に注目されてきている。そのような業界の最先端の動向を考慮し、本研究でも新たにDASを用いた地震活動の観測研究も含むことにした。本研究の研究協力者である産業技術総合研究所の矢部優研究員とともに、国土交通省四国地方整備局所有の光ケーブルを用いて令和3年度末に愛媛県内で行ったDASを用いた地震観測実験では、スラブ内地震のデータも収録することができ、令和4年度からデータ解析を開始した。今後は、既存の観測網によるデータのみならず、新しい技術による観測データの活用を含む研究開発の検討も行なっていきたい。 なお5月の日本地球惑星科学連合ではスラブ内地震に関する国際セッションをコンビナーとして開催し、研究の情報の収集・発信を効率的におこうなうことができた。
|